━小さな世界━
ご機嫌の向井さんの競馬の話を私は『うん。うん。』と相づちを打ちながら聞く。

たまに『それってどんなの?』『すごーい。』『かっこいいね。』

興味深々のように話を聞く。

実際、競馬なんて興味ないしどうでもいい。


だけど絶対そんな態度は見せません。

それがプロだから。



『慧子さんお願いします。』

向井さんの席に座って20分程してボーイが呼びに来た。

『向井さんちょっと待っててね。』
そう言って私が立ち上がろうとした時
向井さんが私の腕を掴み

『何処行くの?』
と問いかけてきた。

『すぐ戻るから。』

私は営業スマイルで答えたら

『もういい。帰ってくんな。』

私の腕を乱暴に振り払った。

機嫌を損ねてしまった。

いつものことだから気にせず
『ごめんね。』と言い
私はボーイの後をついていき
ひとまずバックヤードに戻った。


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