雨が降りやむ前に
鈴の音は明るい音に分類されている。
「雨、降りやまないねー。」
気怠そうに話す私の友人、蕣 紗希は空を見上げながら話した。空は灰色の雲に覆われていて、お世辞でも、「今日はいい天気ですね!」なんて言えない空模様だった。
「だね。紗希は雨好き?」
何気ない質問にも、紗希は顔色変えずに答えてくれる
「私は苦手かなぁ‥?私さ、雨女だから…小さい頃、ピクニックとか好きだったんだけど‥どうも毎回雨が降っちゃって…行けなくなって…」
そこから苦手なんだ。と苦笑気味で紗希は話してくれた。
「そっかぁ…」
私は4時にしては暗い空を見上げながら、ため息紛れに答える
「鈴は雨好きなんでしょ?」
顔色を伺うように、私の視界に入って質問をくれた。
「うん。好き。」
…小さい頃、私は病弱で、いっつも寝たきりだった。起き上がるのも、心臓が痛くなってしまって、顔を動かすのもしんどかったから、窓の外の景色が、いつも見れなかった。
それでも、雨や雷だけは、わかっていた。
私は、音で読み取っていたのだ。
地面に雨水をブツケる激しい音や、雷神様が怒ったような、怒声の雷の音。晴れや曇だと、音がないからどっちかわかんなくて、いつも不満にしてたけど、雨や雷は、寝たきりの私でもわかっていたから、雨が大好きになっていた。
そんな私は手術に成功して、中学から勉強をし始めた。今じゃ高校生だ。生きていることが幸せなのだから。
「うん。好きなのはいいことだもんね~!」
紗希はニコニコとしながら、私のツインテールを弄ってきた
「ツインテール弄るの辞めてよ、!」
「いいじゃーん!可愛いんだから!くるくるしてて‥金髪でかわいい!」
私は金髪ツインテールで、頭の上にはいつも治らない2つのアホ毛が出ている。そして私は、日本人とイギリス人のハーフなのだ。
なので髪色が金髪である。この髪色は気に入ってるし、アホ毛だけはうまく行かないけど、彩り豊かなピンやクリップで髪の毛を弄るのも楽しくて、髪の毛があることが嬉しい。寝たきりの時は、髪が抜けちゃって、なかったから‥。
「私は紗希のストレート髪好きだよ。」
何気なく言うと、紗希はえぇ~?と照れ隠しに首に巻いていたヘッドホンをイジりだした。この子は手癖があって、何か触ってなきゃ気がすまないみたい。
紗希は私とは反対で、見た目はねずみ色の腰まで長いストレート髪、頭の上にはお団子が2つ、前髪は分けていて、目は猫目なのがとっても可愛い。性格も優しいし、大切な友人であ…
「あっー!!!」
紗希が突然叫んだ。あまりにも突然なことだったので、私は耳を塞いで紗希に半ギレて問う
「なに!?うるさ!」
「やばい!締め切り昨日のプリント出すの忘れてた!!」
‥紗希はズボラなところがあるので、プリント類の提出数はとても少なく、指で数えられる程度しか出してない。
「もぉ‥よくこの高校は入れたね!早く出してきて!待ってるんだから。」
了解です~!と半泣きで後者に入っていった紗希を見届けながら、壁に寄りかかる。
今日は部活がない日だから、駅前のカフェでパフェ食べようと約束していた日だった。パフェ早く食べたいなぁと思いながら、紗希を待つ。
「よぉ、帰り?」
紗希の声より低い、男の子の声が聞こえた。私の知り合いなのは確定、誰なのかもすぐわかった。
「あ、お豆。」
「豆って呼ぶなよ」
お豆。と言うのは本名ではない。彼は 織棘 留豆。おとげ るまめ。じゃないよ、おとげ るず。だからね。
豆っていう字が入ってるから、みんなで彼をお豆。と呼んでいた。だから私もお豆って呼んでるのだ
「お前にはちゃんと名前で呼んでほしい。」
私の目を見てくるので、なにか気まずくなって、私は校庭の水溜りを見つめた。
「お豆は誰か待ってんの?」
懲りずにお豆と呼ぶと、苦笑した後、部活の仲間待ってる。と報告してくれた
「私は紗希待ち。またプリント忘れたって」
呆れながら言えば、かえ
「おまたせ、!!」
紗希が帰ってきた。職員室と下駄箱が遠いので、ダッシュで提出しに行ったのだろう。
「もぉ、待ちました。」
「はい!すみません。」
言葉を交わしたら、その後は無言になってしまい、なんだかおかしくなって、二人で優しく笑った。