魅惑的だよ君は
1.新しい生活
4月○日○曜日
大学の入学式の日の朝、
枕元で目覚まし時計が鳴り響く
眠りを邪魔する嫌な音とは反対に
風でなびくカーテンの間からはキラキラとした日の光が覗き込んでいる
まだベットから抜け出せない私に
鏡に反射した光が目に入る
ーうぅ、まぶし…
まるで太陽にに早く起きなさいと言われているかのようだ
ぼんやりとした意識の中、
今日は入学式だということを思い出した
まだ寝ていたかったが、
入学式当日に遅刻するわけにも行かないので、
意を決してベットから起き上がる
ーーーーーーー
超が付くほど人見知りの私は
大学生活を目の前にして
入学式に行くことがすでに不安だった
ーあぁ、今日の入学式緊張するなぁ
入学式用の新しいスーツを着て鏡の前に立ち、
鏡に映る自分に声を掛ける
「大丈夫、頑張れ…」
励ますように胸の前で小さく拳を作る
そして、ポケットの中に愛用のイヤホンを握って
何度も聴いたピアノの音と一緒に、ずっと会いたいと思っていた人を思い出す…
一度しか会ったことはないけれど、
恋愛なんて知らなかった私が、初めて憧れた初恋の人
あの人のことを考えると
さっきまで不安で緊張していた心が
ワクワクする恋心に塗り替えられていく
ー今日からあの人と同じ大学に行くんだ…!
ー髪型、メイク、服装…
ー髪型、メイク、服装…
初恋の人に会えるかもしれないと思うと
鏡を見ながら何度も何度も確認してしまう
ふと時間が気になって時計を見る
「もうこんな時間っ!」
友人との待ち合わせ時間が近づいているのに気がついて
慌てて家を出た