魅惑的だよ君は
通勤通学の人が大勢いる電車の中で
降りる駅を待ちながら
「本当にギリギリで間に合ったね」
と、笑いながら話してくれた
群司は高校の同級生で、
人見知りの私が気兼ねなく話せる唯一の友人だ
今日の群司は、
ついに始まった新生活に心躍らせているのか
いつもより少しテンションが上がっているように感じる
「ねぇ亜美、
大学生になったしバイトとかする?」
「うん、する予定だよ…!」
「お…!そうなんだ」
悩むことなくすぐに答える私に、少し驚く群司
「実はもう決まってて…」
「え、どこで?」
予想外の返答だったのか、少し声が大きくなる
「前通ってた塾だよ」
「塾の先生かぁ…まだバイト募集してる?
俺、雇ってくれるところ探してるんだよね」
「バイト募集してるんだけど…」
「だけど?」
「ごめんね、塾の卒業生しか雇わないんだって…」
そういうと、
わかりやすいくらい落ち込む群司
垂れ下がった犬の耳が見えそうだ
ー私ではどうしようもできなくってごめん…
と、申し訳なさを感じた
〜♪〜♪〜♪〜
『まもなく扉が開きます』
ちょうど電車が降りる駅に到着した