俺が必ずこの女を殺す
「こいつ……、じゃなかった。澪奈。喋れないんすか?」

すると医者は言った。

「あぁ…事故のショックで今は上手く言葉が出ないのかもしれないね」

「へぇ…、そうなんすか」

記憶喪失で声出ねぇ、とか、
なんか……

………………………………可哀想だな。

って!何これから殺す女に同情してんだ、俺!

浅くため息を吐き出していると叔母が何かを思い付いたように言った。

「あ!西島くん、っていったかしらね!?もしよかったらしばらくこの子と過ごしてあげてくれないかしら?」

「え、?は?」

「記憶喪失なら、きっとあなたの事も忘れちゃってるでしょう?恋人に忘れられるなんて、そんなの悲しいじゃない…。一緒に過ごしてたら思い出すかもしれないわ」

「いや、でも……過ごす、って…」

「体調的には何も問題ないみたいだし、退院したら是非あなたの家で」

「俺の!?」

つい動揺し声を荒らげる。

この女を引き取れ、と!?

なんとも強引でめちゃくちゃな提案だが……

もしやこれは…、

都合がいいのでは​───────?

俺はこの女を殺したい。

そして

この叔母は、
この女の居所を俺に一任しようとしている。
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