俺が必ずこの女を殺す
柚季の輪郭に触れていた自分の手をダラン、と下ろし、私は降参でもするかのようにゆっくりと後ろに下がる。

途端に恥ずかしくなって俯いた。

さっきまで柚季の暖かい唇に触れていたというのに、今ではすっかり小刻みに震えてしまっていた。

どうしよう……。

助けて……雨ー……

ーー((あっ、もしよく分かんなかったら、もうぜーんぶ柚季さんに任せちゃいましょう!押し倒して上目遣いで、こう言うんです……!))

あっ……。

助け舟のような雨の助言を思い出し、負けじと私はもう一度柚季の肩に手を伸ばす。

ーードサッ……

ベッドまでは少し距離があったから、床で…。

そのまま、乗りかかるように柚季を押し倒した。

俯いていた顔を少しだけ上げて、上目遣いを作った私はやっとの思いで震える声を絞り出した。

ーー((押し倒して上目遣いで、こう言うんです……!))

よし!

せーの……っ。


「……て、…くだ、……さい」


「え?」

思ったより声が出なくて柚季が不思議そうに自身の体に馬乗りに乗っかった私を見つめていた。

泣きそうになりながら私はさっき以上の勇気を出す。




「……………………襲って…下さい」



懇願するような瞳を柚季に向ける。

一瞬も逸らすことなく向け続けた。

だけど柚季は困惑気味にこちらを凝視するのみで何も……。

だけど私だって……
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