俺が必ずこの女を殺す
「彼氏なんですよね…。……襲って下さいよ…」

畳み掛けるように繰り返す。

「…っ、」

何も思い出せない自分が情けなかった。

記憶が無くなる前の私はどんな風に柚季を好きで、想いを寄せていたんだろう。もし……、え、エッチをすることで思い出せることがあるのなら……。私は……

「……思い出したいんです」

極度の緊張からか、グルグル目が回るような時間が過ぎる。

それでも引かなかった。

だって私…、柚季が大好き​───────。

だから…、どうしても思い出したい。

柚季のこと。柚季との思い出。
きっと私にとって、すごく大切な記憶だったと思うから。大好きな人との思い出は…、一瞬でも欠けたままは嫌だから……。

「柚季のことだけ……思い出せない……っ、、嫌です……っ、そんなの……っ」

込み上げる気持ちにもう蓋なんて出来そうになかった。

もっと触れさせて下さい……。

もっと……っ、もっとあなたと───…

目をギュッ、とつぶってもう一度唇を近づけようとしたその時。

ーーパチン!

「いて…っ」

どうやらデコピンされたみたいだ。
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