俺が必ずこの女を殺す
俺こそありがと、だけどな。

幹部になっていずれは総長に。そんな願いばかり追い続けて今まで生きてきたが、お前と過ごすようになって、俺はこんなにも‪”‬今‪”‬を手離したくない、と頻繁に感じるようになった。

「あのね」

短く放たれたその言葉を境に視線をさ迷わせた澪奈の頬がぼんやりと紅潮していく。いつの間にか口の端にはカスタードが付いていた。

「どうした?」

カスタードはあとで取ってやろう。

そう思いながら先を促す。すると澪奈が俺の顔を直視…よりかは少し俯き気味で口角を上げた。

「私思ったんだ!何回記憶なくなっちゃっても、柚季のこと好きになっちゃうなーって!」

「…っ」

それは多分……、俺にとって強烈な威力を放つ言葉で。俺の心臓に容赦なく滑り込んでジーン……と広がっていくのを感じた。

「てへへ、なんか照れる…っ」

言葉通り。見るからに照れている澪奈。
だけどきっと照れているのは俺もだ。

「ありがとな。澪奈」

この世に存在する言葉では上手く言い表せないような、そんな不思議な気持ちだ。

そのくらい、…………嬉しい気持ちだ。

「ついてるよ」

少し腰を浮かせて澪奈の口元に手をやる。

カスタードを拭ってやると相変わらずぷにょぷにょの唇が少しだけ親指に当たって、不意打ちにドキリ、としてしまった。
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