破壊
「は、意味分かんねぇから。冷めるようなこと言ってんじゃねぇ。誰がお前の言葉通りに死ぬかよ」

「だから、協力してあげるって言ったんだよ」

「日本語分かる? 会話が成立してないんだけど」

「余裕な態度でいられるのも今のうち。ちゃんと最期の言葉を考えておいた方がいいよ」

「全然噛み合わないな。まあ、お前頭沸いてるから仕方ないか」

「俺からしたら沸いてるのは君の方だよ。死んだ方がいいと思う。俺が手を貸してあげる」

「何なんだよお前。俺に恨みでもあんのか」

「あるよ。俺は君のことが嫌い。死ねって思ってる」

「へぇー、奇遇だな。俺もお前のことめちゃくちゃ嫌いだわ。死ねよ」

「死ぬのは君だよ」

「俺は死なねぇから」

 険悪なムードが漂い始める。空気が悪く、やけに殺伐としていた。一触即発。殴り合いの喧嘩になりそうな雰囲気ではないが、口での攻防戦は激化してしまいそうだった。

 口調は柔らかいのに、目は一つも笑っていない鈴原が、霧崎くん、と声をかけ俺の上体を起こした。優しく頭を撫でられた感覚がまだ残っていて、その不思議な心地よさにゆらゆらと体が揺れているような気がする。

「霧崎くん、今から俺が言うこと、霧崎くんなら黙って従ってくれるよね」

 目を合わせ、髪を撫でる鈴原に取り込まれていく。ふわふわとした頭のまま、操られるように頷いてしまうと、鈴原は満足そうに微かな笑みを浮かべ、俺の耳元に唇を寄せた。鈴原の吐息が鼓膜を揺らし、鈴原の声しか聞こえなくなる。

 鈴原はある方向を、ある人物を指差し、俺の視線をそちらに向けさせてから、内緒話をするように囁いた。
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