破壊
「"Kill"」
ピキピキと鼓膜が鳴る。ビリビリと電気が走る。あまりに強く衝撃的なコマンドに、今にも消え失せようとしていた理性が舞い戻り、自らを守ろうとし始めた。それを見越したように、鈴原が俺を抱き寄せる。大丈夫、何も心配しなくていい、殺しの邪魔はさせないから、とそういう問題ではないのにそういう問題にしてしまう鈴原に、そういう問題なのかという気分にさせられた。それでも俺は、無意識のうちにふるふると首を左右に振ってしまっていた。
できない。できない。人を殺すなど、できるわけがない。いくらコマンドでも、それはできない。やりたくない。やりたくないのに。やってはいけないのに。やらないといけない。従う方が大事。そんなわけがないのに。従わないといけない。やらないと。やらないと。善い思いをさせてはくれない。鈴原に褒められたい。谷坂を殺して。鈴原に頭を撫でてもらいたい。そのためには、殺さないと、いけない。でも。でも。殺すなんて、できない。俺には、できない。でも、殺さないと。
「あ、あ……」
「大丈夫だよ霧崎くん。霧崎くんならできるから。ほら、急いで。もうすぐ休み時間が終わる。先生が来る。ああ、でも、次の授業は英語だから、先生少し遅れるかもね。たまに授業忘れるお爺ちゃん先生だから、今回も忘れてくれていたら万々歳だね」
殺すこと前提で俺を煽って急かす鈴原の声が理性を揺らす。充てられるグレアに圧を感じ、喘ぐような声しか漏れない。感じていた心地よさが消え去りそうなのに、言葉とは裏腹に俺を甘やかす手にストップをかけられ、目や頭が一向に覚めなかった。視界や脳髄に霞がかかっているみたいだ。はっきりせず、夢見心地な感覚が抜けない。
ピキピキと鼓膜が鳴る。ビリビリと電気が走る。あまりに強く衝撃的なコマンドに、今にも消え失せようとしていた理性が舞い戻り、自らを守ろうとし始めた。それを見越したように、鈴原が俺を抱き寄せる。大丈夫、何も心配しなくていい、殺しの邪魔はさせないから、とそういう問題ではないのにそういう問題にしてしまう鈴原に、そういう問題なのかという気分にさせられた。それでも俺は、無意識のうちにふるふると首を左右に振ってしまっていた。
できない。できない。人を殺すなど、できるわけがない。いくらコマンドでも、それはできない。やりたくない。やりたくないのに。やってはいけないのに。やらないといけない。従う方が大事。そんなわけがないのに。従わないといけない。やらないと。やらないと。善い思いをさせてはくれない。鈴原に褒められたい。谷坂を殺して。鈴原に頭を撫でてもらいたい。そのためには、殺さないと、いけない。でも。でも。殺すなんて、できない。俺には、できない。でも、殺さないと。
「あ、あ……」
「大丈夫だよ霧崎くん。霧崎くんならできるから。ほら、急いで。もうすぐ休み時間が終わる。先生が来る。ああ、でも、次の授業は英語だから、先生少し遅れるかもね。たまに授業忘れるお爺ちゃん先生だから、今回も忘れてくれていたら万々歳だね」
殺すこと前提で俺を煽って急かす鈴原の声が理性を揺らす。充てられるグレアに圧を感じ、喘ぐような声しか漏れない。感じていた心地よさが消え去りそうなのに、言葉とは裏腹に俺を甘やかす手にストップをかけられ、目や頭が一向に覚めなかった。視界や脳髄に霞がかかっているみたいだ。はっきりせず、夢見心地な感覚が抜けない。