龍は千年、桜の花を待ちわびる
「秀明…!」
「何をするのだ! そっとしておいてやらぬか!」
「そうだよ、アンタだって許さないよ…!」
「この野郎…。」
「結と皇憐の邪魔するな!」
皆が怒りで大噴火の中、いつものように秀明は皆を「まぁまぁ」と宥めていた。
私と皇憐はといえば、突然の横槍に呆然としていた。
「結、皇憐。」
「あ?」
邪魔をされた皇憐はかなり不機嫌そうだ。私は呆然としたまま、秀明に目を向けた。
「まだ、『最後の奇跡』が残ってるんだ。」
「……は?」
全員が驚嘆の声を漏らした。
「結には言ったでしょ? 『残りの奇跡』を起こしてあげるって。」
「え…、桜を見ることじゃないの…?」
「1000年越しで桜なわけないでしょ?」
ニコニコしながらも、「結が鈍くてよかった」なんて言う秀明に困惑した。
「どういうこと…?」
呆然とした私を他所に、秀明は皇憐に1枚の紙を渡した。
「ここに、僕らの世界へ渡るための術式が書いてある。」
「はっ…。」
「皇憐の妖力があれば、できるはずだよ。」
そう笑う秀明を、皆ポカンと見つめた。
「どう? 結。『最後の奇跡』、気に入ってもらえた?」
「秀明っ…。馬鹿っ…。」
私は止まっていたはずの涙をボロボロと零した。こんなの、最高すぎる。
「来る? 皇憐。もうこの世界には戻って来れなくなっちゃうけど。」
そう挑発的に笑う秀明に、少しの間を開けて皇憐はニヤリと笑って返した。
「この世界にもう何千年も居て飽きたからな。まだ俺の知らねぇ世界、行ってやる。」
「皇憐っ…。」
私が皇憐に抱き付くと、皇憐はキツく私を抱き締め返した。
「一緒に居れるの?」
「そうみてぇだな。」
「側に居てくれるの?」
「あぁ。」
そんな私たちを見て、皆は笑顔になっていた。
「最初に『側に居てくれ』って言ったのは俺だ。けど、次に『側に居てくれ』って言ったのは結だ。」
「うんっ…。」
「もう、離さねぇし、離れねぇ。」
「うんっ…。」
少しの間そうして抱き合った後、私たちは離れた。
「僕の術じゃ僕と結の分しかもたないから、皇憐は自分で術を使ってこっちに来てね。」
「あぁ。」
「出て来た先には、僕が居るはずだから。成功を祈ってるよ。」
「おう、任せとけ。」
「待ってるね、皇憐…!」
「あぁ…待ってろ。」
そうして私たちは皆に改めて別れを告げ、秀明は術を発動させた。
(召喚された時と同じ…。)
足元の陣が眩い光を放ち、やがて私たちの体を完全に包み込んでいった。
いつの間にか、地面の感覚がない。立っているのか浮いているのか、それさえも分からない。
やがて私は意識を手放した。
「何をするのだ! そっとしておいてやらぬか!」
「そうだよ、アンタだって許さないよ…!」
「この野郎…。」
「結と皇憐の邪魔するな!」
皆が怒りで大噴火の中、いつものように秀明は皆を「まぁまぁ」と宥めていた。
私と皇憐はといえば、突然の横槍に呆然としていた。
「結、皇憐。」
「あ?」
邪魔をされた皇憐はかなり不機嫌そうだ。私は呆然としたまま、秀明に目を向けた。
「まだ、『最後の奇跡』が残ってるんだ。」
「……は?」
全員が驚嘆の声を漏らした。
「結には言ったでしょ? 『残りの奇跡』を起こしてあげるって。」
「え…、桜を見ることじゃないの…?」
「1000年越しで桜なわけないでしょ?」
ニコニコしながらも、「結が鈍くてよかった」なんて言う秀明に困惑した。
「どういうこと…?」
呆然とした私を他所に、秀明は皇憐に1枚の紙を渡した。
「ここに、僕らの世界へ渡るための術式が書いてある。」
「はっ…。」
「皇憐の妖力があれば、できるはずだよ。」
そう笑う秀明を、皆ポカンと見つめた。
「どう? 結。『最後の奇跡』、気に入ってもらえた?」
「秀明っ…。馬鹿っ…。」
私は止まっていたはずの涙をボロボロと零した。こんなの、最高すぎる。
「来る? 皇憐。もうこの世界には戻って来れなくなっちゃうけど。」
そう挑発的に笑う秀明に、少しの間を開けて皇憐はニヤリと笑って返した。
「この世界にもう何千年も居て飽きたからな。まだ俺の知らねぇ世界、行ってやる。」
「皇憐っ…。」
私が皇憐に抱き付くと、皇憐はキツく私を抱き締め返した。
「一緒に居れるの?」
「そうみてぇだな。」
「側に居てくれるの?」
「あぁ。」
そんな私たちを見て、皆は笑顔になっていた。
「最初に『側に居てくれ』って言ったのは俺だ。けど、次に『側に居てくれ』って言ったのは結だ。」
「うんっ…。」
「もう、離さねぇし、離れねぇ。」
「うんっ…。」
少しの間そうして抱き合った後、私たちは離れた。
「僕の術じゃ僕と結の分しかもたないから、皇憐は自分で術を使ってこっちに来てね。」
「あぁ。」
「出て来た先には、僕が居るはずだから。成功を祈ってるよ。」
「おう、任せとけ。」
「待ってるね、皇憐…!」
「あぁ…待ってろ。」
そうして私たちは皆に改めて別れを告げ、秀明は術を発動させた。
(召喚された時と同じ…。)
足元の陣が眩い光を放ち、やがて私たちの体を完全に包み込んでいった。
いつの間にか、地面の感覚がない。立っているのか浮いているのか、それさえも分からない。
やがて私は意識を手放した。