龍は千年、桜の花を待ちわびる
目を覚ますと、アパートの一室のようだった。
「気が付いた?」
「秀明…。」
ボンヤリとする頭で起き上がると、周りの物で元の世界に帰って来たんだと何となく把握できた。
「はい、お水。」
「ありがとう…。ここは…?」
受け取った水を飲みながら、辺りを見回す。
「僕の仕事部屋。」
ハッキリしてきた頭で周りを見回すと、確かにイメージ通りの漫画家の部屋が広がっていた。
「アシスタントさんとか入れるとなると、実家じゃ無理でね。1Rだけど。」
「売れっ子漫画家はすごいなぁ…。…皇憐は…?」
「術の準備に少し時間がかかると思う。空が居るから大丈夫だと思うけど、とにかく今日は帰りな。」
そう言われて時計を見て息を飲んだ。
「23時…!!」
「日付は変わってないね、セーフ。」
慌てて秀明から鞄を受け取ると、携帯の電源を入れた。
すると、両親からおびただしい量の着信履歴が入っていた。知らない番号も混ざっているが、数字の並びに見覚えがあるので恐らく学校だろう。
そう思った矢先に、携帯が鳴った。
「お母さんだ…。」
「出な。」
「うん…。」
笑顔で言う秀明とは裏腹に、緊張しながら通話を押した。その瞬間、スピーカーにしていなくても聞こえる声量で電話口からお母さんの声がした。
『結!? 無事なの!?』
「ご、ごめんね、お母さん…。」
『あぁよかった…! ずっと電源は入ってないし、学校は普通に出たって言うし…! 今どこに居るの!? 迎えに行くから!!』
そう言われて困惑していると、笑顔の秀明から紙を渡された。どうやらここの住所のようだ。
「えっと…え?」
驚いて秀明を見ると、秀明は笑顔で頷いた。
「家から…歩いて10分、15分くらいの所…。」
『そんな近く!? どこに隠れてたの、もう!!』
その後迎えに行くとうるさいお母さんを何とか説き伏せて、秀明に家の近くまで送ってもらって帰ることにした。
「本当に近くだったんだね…。」
「僕もびっくり。」
「実家も近い?」
「仕事部屋から歩いて5分くらいだよ。」
「そうなんだ…。」
どうやら小、中学校の学区が異なっていたようで、秀明も全く気付かなかったようだ。
「皇憐がこっちに来たら連絡するね。」
「うん、お願いします。」
「じゃあ、おやすみ。」
「おやすみ…。」
私と秀明は、連絡先を交換して別れた。
まるで、長い夢でも見ていたかのような気分だ。けれどあれは、“現実”だった。
そして帰宅後、私は両親にこってりと絞られた。けれど、「1人になりたい気分だった」という思春期らしい嘘は、思ったよりも有効的だった。
「気が付いた?」
「秀明…。」
ボンヤリとする頭で起き上がると、周りの物で元の世界に帰って来たんだと何となく把握できた。
「はい、お水。」
「ありがとう…。ここは…?」
受け取った水を飲みながら、辺りを見回す。
「僕の仕事部屋。」
ハッキリしてきた頭で周りを見回すと、確かにイメージ通りの漫画家の部屋が広がっていた。
「アシスタントさんとか入れるとなると、実家じゃ無理でね。1Rだけど。」
「売れっ子漫画家はすごいなぁ…。…皇憐は…?」
「術の準備に少し時間がかかると思う。空が居るから大丈夫だと思うけど、とにかく今日は帰りな。」
そう言われて時計を見て息を飲んだ。
「23時…!!」
「日付は変わってないね、セーフ。」
慌てて秀明から鞄を受け取ると、携帯の電源を入れた。
すると、両親からおびただしい量の着信履歴が入っていた。知らない番号も混ざっているが、数字の並びに見覚えがあるので恐らく学校だろう。
そう思った矢先に、携帯が鳴った。
「お母さんだ…。」
「出な。」
「うん…。」
笑顔で言う秀明とは裏腹に、緊張しながら通話を押した。その瞬間、スピーカーにしていなくても聞こえる声量で電話口からお母さんの声がした。
『結!? 無事なの!?』
「ご、ごめんね、お母さん…。」
『あぁよかった…! ずっと電源は入ってないし、学校は普通に出たって言うし…! 今どこに居るの!? 迎えに行くから!!』
そう言われて困惑していると、笑顔の秀明から紙を渡された。どうやらここの住所のようだ。
「えっと…え?」
驚いて秀明を見ると、秀明は笑顔で頷いた。
「家から…歩いて10分、15分くらいの所…。」
『そんな近く!? どこに隠れてたの、もう!!』
その後迎えに行くとうるさいお母さんを何とか説き伏せて、秀明に家の近くまで送ってもらって帰ることにした。
「本当に近くだったんだね…。」
「僕もびっくり。」
「実家も近い?」
「仕事部屋から歩いて5分くらいだよ。」
「そうなんだ…。」
どうやら小、中学校の学区が異なっていたようで、秀明も全く気付かなかったようだ。
「皇憐がこっちに来たら連絡するね。」
「うん、お願いします。」
「じゃあ、おやすみ。」
「おやすみ…。」
私と秀明は、連絡先を交換して別れた。
まるで、長い夢でも見ていたかのような気分だ。けれどあれは、“現実”だった。
そして帰宅後、私は両親にこってりと絞られた。けれど、「1人になりたい気分だった」という思春期らしい嘘は、思ったよりも有効的だった。