龍は千年、桜の花を待ちわびる
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目を覚ますと、見慣れた鎌倉の天井が視界に入った。
「結、目が覚めたか!?」
視線だけを動かして声の方を見ると、皇憐が側に居た。
「皇、憐…。」
「よかった…。吐き気とかないか?」
あれ…、私、どうしたんだっけ…。確か、賊に囲まれて…。あぁ、そっか、眠らされちゃったんだ…。
「大丈夫…。っ…。」
起き上がろうとすると、頭がどんよりと重かった。
「無理するな、まだ寝てろ。」
「ん…。」
私は起き上がるのを諦めると天井を眺めた。まだ頭がボンヤリする。恐らく薬が抜け切っていないんだろう。
「あれからどれくらい…?」
「数時間だ。今は夜。今日はもうこのままここから動かねぇから、安心して寝てろ。」
「うん…。」
私はそのまま意識を手放した。
次に目を覚ましたときには、激しい音が鎌倉内に響いていた。
「皇憐…?」
名前を呼ぶと、皇憐は変わらず側に居てくれた。
「ここに居るぞ。」
「うん…。」
ゆっくりと体を起こすと、今度は問題なく起き上がることができた。けれど、長く寝過ぎたせいかまだ少しボンヤリする。
「何の音…?」
「雨、みぞれ、あられの土砂降りだ。」
「そう…。朝になったの…?」
「多分昼ちょい前くらいだろうな。」
「寝過ぎちゃった…。」
「どっちにせよこの天気じゃ移動はキツいからな、わざと起こさなかった。ちゃんと眠れたか?」
「うん…。」
「よかった。」
そう優しく笑う皇憐に、何だかドキマギしてしまう。一気に目が覚めた。もちろんいつも優しいが、こんな風にストレートな優しさを向けられると照れ臭い。
「それで…謝らないといけねぇことがあるんだが…。」
そう言って皇憐は、私の左側に回り込むと、地面に膝をついた。
「悪い、お前に怪我させた。」
「え…?」
「丁度様子も見てぇから、一緒に確認してくれるか…?」
「うん…。」
そう言われて、背を向ける皇憐の後ろで指示通りズボンを脱いで驚いた。左太腿に包帯が巻かれている。干し草のベッドに腰掛け、腰の周りに布団を巻きつけて皇憐に「いいよ」と声を掛けた。
皇憐は振り向くと、すごく申し訳なさそうな顔をしながら左脚の側にしゃがんだ。
「触るぞ。」
「うん…。」
皇憐はそっと包帯を解くと、患部に当てていたガーゼをそっと外した。
左太腿には紙で切ったような細い傷ができていた。言われるまで全く分からなかったため、痛みはないようだ。見た目からして傷も深くない。素人目でも痕は残らないだろうと分かる。
「痛くねぇか…?」
すごくしょんぼりしながら言うもんだから、ついつい笑いそうになってしまった。
「全然痛くないよ。言われなかったら気付かなかったくらい。」
「よかった…。」
「皇憐が手当してくれたんでしょ? ありがとう。」
「いや…。」
皇憐は患部に薬を塗ると、新しいガーゼを当てて包帯を巻いてくれた。
「悪い…、俺が迂闊だったせいで…。」
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目を覚ますと、見慣れた鎌倉の天井が視界に入った。
「結、目が覚めたか!?」
視線だけを動かして声の方を見ると、皇憐が側に居た。
「皇、憐…。」
「よかった…。吐き気とかないか?」
あれ…、私、どうしたんだっけ…。確か、賊に囲まれて…。あぁ、そっか、眠らされちゃったんだ…。
「大丈夫…。っ…。」
起き上がろうとすると、頭がどんよりと重かった。
「無理するな、まだ寝てろ。」
「ん…。」
私は起き上がるのを諦めると天井を眺めた。まだ頭がボンヤリする。恐らく薬が抜け切っていないんだろう。
「あれからどれくらい…?」
「数時間だ。今は夜。今日はもうこのままここから動かねぇから、安心して寝てろ。」
「うん…。」
私はそのまま意識を手放した。
次に目を覚ましたときには、激しい音が鎌倉内に響いていた。
「皇憐…?」
名前を呼ぶと、皇憐は変わらず側に居てくれた。
「ここに居るぞ。」
「うん…。」
ゆっくりと体を起こすと、今度は問題なく起き上がることができた。けれど、長く寝過ぎたせいかまだ少しボンヤリする。
「何の音…?」
「雨、みぞれ、あられの土砂降りだ。」
「そう…。朝になったの…?」
「多分昼ちょい前くらいだろうな。」
「寝過ぎちゃった…。」
「どっちにせよこの天気じゃ移動はキツいからな、わざと起こさなかった。ちゃんと眠れたか?」
「うん…。」
「よかった。」
そう優しく笑う皇憐に、何だかドキマギしてしまう。一気に目が覚めた。もちろんいつも優しいが、こんな風にストレートな優しさを向けられると照れ臭い。
「それで…謝らないといけねぇことがあるんだが…。」
そう言って皇憐は、私の左側に回り込むと、地面に膝をついた。
「悪い、お前に怪我させた。」
「え…?」
「丁度様子も見てぇから、一緒に確認してくれるか…?」
「うん…。」
そう言われて、背を向ける皇憐の後ろで指示通りズボンを脱いで驚いた。左太腿に包帯が巻かれている。干し草のベッドに腰掛け、腰の周りに布団を巻きつけて皇憐に「いいよ」と声を掛けた。
皇憐は振り向くと、すごく申し訳なさそうな顔をしながら左脚の側にしゃがんだ。
「触るぞ。」
「うん…。」
皇憐はそっと包帯を解くと、患部に当てていたガーゼをそっと外した。
左太腿には紙で切ったような細い傷ができていた。言われるまで全く分からなかったため、痛みはないようだ。見た目からして傷も深くない。素人目でも痕は残らないだろうと分かる。
「痛くねぇか…?」
すごくしょんぼりしながら言うもんだから、ついつい笑いそうになってしまった。
「全然痛くないよ。言われなかったら気付かなかったくらい。」
「よかった…。」
「皇憐が手当してくれたんでしょ? ありがとう。」
「いや…。」
皇憐は患部に薬を塗ると、新しいガーゼを当てて包帯を巻いてくれた。
「悪い…、俺が迂闊だったせいで…。」