龍は千年、桜の花を待ちわびる
目を覚ますと、私はどこかに横たわっていた。
(一体何が…?)
ゆっくり体を起こすと、何やら人の声がする。それも1人や2人じゃない。周りを見回すと、十数人規模の人に取り囲まれていた。どうやら私は祭壇の上にいるようだった。
異様な光景だが、頭がボンヤリとして上手く働かない。
(私…帰ってる途中で…。)
そこまで思い出してハッとした。
辺りを見渡すと、そこは完全に日本……私の知っている世界ではなかった。
大きな階段が続き、その上には古代中国の宮殿のような建物。私を取り囲む人々の服装も、私の知る現代の物ではなかった。
(まさか、ここって…。)
「大丈夫…?」
突然あまり抑揚のない声で訊ねられて、私は側に立った声の主を振り返った。
声の主は、文字通り“真っ白な女の子”だった。女の子というにはあまりに幼い見た目だ。そして、髪も服も、肌も瞳の色も、何もかもが真っ白…。
(ま、まさか…幽霊…。)
驚きのあまり身を縮こめて黙りこくっていると、その女の子は首を傾げた。ハッと我に返って何とか声を絞り出す。
「あ、だだだ、大丈夫、です…。」
そう答えると、女の子は微かに口角を上げた。一瞬目が潤んだような気がしたが、気のせいだろうか。
「よかった…。」
とりあえず、危害を加えられることはなさそうだ。よし、落ち着け私…。よく見れば、真っ白なのはこの子だけ…。しかも私、この子のこと“知ってる”じゃない。
「私…空…。ようこそ…、桜和国へ…。」
今、桜和国って言ったよね。この子、空って名前だって言ったよね。
「マジか……。」
「ま…?」
馴染みのない言葉に困惑する空を放っておいて、私は脳内を整理した。
まさかとは思っていたが、桜和国は『皇憐-koren-』の舞台となる国の名前だ。さらにこの空は、『皇憐-koren-』にも登場する人物。
ということは、ここは…。
「異世界…?」
「そう…。」
まさかの同意を得られて、私は固まった。同意を得られるなんて…そんなことある…?
「とりあえず、来て…。」
空に促されて祭壇から降りると、祭壇を囲む群衆が自然と道を開けた。そのど真ん中を堂々と歩く空と、身を縮こめたままの私は宮殿へと続く階段を登り始めた。
まさかの同意を得られたわけだけど、異世界に召喚された? それとも…漫画の世界に入った…? いや…でも、私の記憶にある転生前の世界と何となく重なる…。
そうなると、漫画の世界に入ったわけじゃなくて、転生前の異世界に召喚されたって方…なの…?
ということは、ここは私が転生前に生きていた世界…?
あまりの急展開に頭がついていかないながらもパニックにならずにいられるのは、この世界の雰囲気に馴染みがあるからだろうか。
階段を登りながら改めて周囲を見渡してみるも、建物や城壁が高すぎて他には何も見えない。正直、なんだかピンとこない…。
「あなた…名前…。」
「あ、結…。」
「結…。」
それ以上は無言のまま、階段を登り切った。
「はぁ…。」
なんて大きな建物。『皇憐-koren-』と時代が同じだとすれば、この世界には工事車両なんてないはず。人力でこの大きさ…? 人ってすごいなぁ、尊敬する…。
近くに立ってしまうとかなり見上げないといけない大きさだ。もっとも、屋根の縁が邪魔して屋根のテッペンは全く見えないのだが。
「結…。」
建物に見惚れていると、空に促すように呼ばれた。
「あ、今行く…。」
駆け足でついて行くと、空は兵に顔パスで扉を開けさせ、再び堂々とど真ん中を歩いて中へと入って行った。私はその後ろをビクビクしながらついて行った。
入って正面、見上げた先に玉座に座る皇帝と皇后がいた。
部屋も煌びやかで豪華だし、あの身なり。本当に、本物の皇帝と皇后だと視覚だけで十分に理解できる。
(一体何が…?)
ゆっくり体を起こすと、何やら人の声がする。それも1人や2人じゃない。周りを見回すと、十数人規模の人に取り囲まれていた。どうやら私は祭壇の上にいるようだった。
異様な光景だが、頭がボンヤリとして上手く働かない。
(私…帰ってる途中で…。)
そこまで思い出してハッとした。
辺りを見渡すと、そこは完全に日本……私の知っている世界ではなかった。
大きな階段が続き、その上には古代中国の宮殿のような建物。私を取り囲む人々の服装も、私の知る現代の物ではなかった。
(まさか、ここって…。)
「大丈夫…?」
突然あまり抑揚のない声で訊ねられて、私は側に立った声の主を振り返った。
声の主は、文字通り“真っ白な女の子”だった。女の子というにはあまりに幼い見た目だ。そして、髪も服も、肌も瞳の色も、何もかもが真っ白…。
(ま、まさか…幽霊…。)
驚きのあまり身を縮こめて黙りこくっていると、その女の子は首を傾げた。ハッと我に返って何とか声を絞り出す。
「あ、だだだ、大丈夫、です…。」
そう答えると、女の子は微かに口角を上げた。一瞬目が潤んだような気がしたが、気のせいだろうか。
「よかった…。」
とりあえず、危害を加えられることはなさそうだ。よし、落ち着け私…。よく見れば、真っ白なのはこの子だけ…。しかも私、この子のこと“知ってる”じゃない。
「私…空…。ようこそ…、桜和国へ…。」
今、桜和国って言ったよね。この子、空って名前だって言ったよね。
「マジか……。」
「ま…?」
馴染みのない言葉に困惑する空を放っておいて、私は脳内を整理した。
まさかとは思っていたが、桜和国は『皇憐-koren-』の舞台となる国の名前だ。さらにこの空は、『皇憐-koren-』にも登場する人物。
ということは、ここは…。
「異世界…?」
「そう…。」
まさかの同意を得られて、私は固まった。同意を得られるなんて…そんなことある…?
「とりあえず、来て…。」
空に促されて祭壇から降りると、祭壇を囲む群衆が自然と道を開けた。そのど真ん中を堂々と歩く空と、身を縮こめたままの私は宮殿へと続く階段を登り始めた。
まさかの同意を得られたわけだけど、異世界に召喚された? それとも…漫画の世界に入った…? いや…でも、私の記憶にある転生前の世界と何となく重なる…。
そうなると、漫画の世界に入ったわけじゃなくて、転生前の異世界に召喚されたって方…なの…?
ということは、ここは私が転生前に生きていた世界…?
あまりの急展開に頭がついていかないながらもパニックにならずにいられるのは、この世界の雰囲気に馴染みがあるからだろうか。
階段を登りながら改めて周囲を見渡してみるも、建物や城壁が高すぎて他には何も見えない。正直、なんだかピンとこない…。
「あなた…名前…。」
「あ、結…。」
「結…。」
それ以上は無言のまま、階段を登り切った。
「はぁ…。」
なんて大きな建物。『皇憐-koren-』と時代が同じだとすれば、この世界には工事車両なんてないはず。人力でこの大きさ…? 人ってすごいなぁ、尊敬する…。
近くに立ってしまうとかなり見上げないといけない大きさだ。もっとも、屋根の縁が邪魔して屋根のテッペンは全く見えないのだが。
「結…。」
建物に見惚れていると、空に促すように呼ばれた。
「あ、今行く…。」
駆け足でついて行くと、空は兵に顔パスで扉を開けさせ、再び堂々とど真ん中を歩いて中へと入って行った。私はその後ろをビクビクしながらついて行った。
入って正面、見上げた先に玉座に座る皇帝と皇后がいた。
部屋も煌びやかで豪華だし、あの身なり。本当に、本物の皇帝と皇后だと視覚だけで十分に理解できる。