龍は千年、桜の花を待ちわびる
金言がすっかり秀明や宮殿に慣れ私が不要になった頃、私たちはついに会議に出席することを許された。
「調べたところ、母親の胎内にいる際に怨念の影響を受けたようです。母親は、出産後死亡しています。」
秀明がそう述べると、皇帝は「ふむ」と頷きながら金言を見た。私の膝の上に座っていた金言は身を固くした。髪を撫でてやると、安心したように体の力を抜いた。
「怨念に適応した例、ということか?」
「そうなります。」
いつもと違い、凛とした秀明はかっこよかった。風格は既に皇帝並み。将来が楽しみだ。
「他にも各地に金言のような者がいるはずです。怨念への対処法はまだ分かっていませんが…、霊力のある者や、金言のような者がもっと必要です。」
「分かった。国中に触れを出そう。」
「あともう1つ。桜琳と皇憐に国を巡って来てほしいのです。」
皇帝は目を見開いて私と皇憐を見た。私と皇憐は頷いた。
「宮殿から出られない秀明様に代わって、国の状況を実際に見る必要があるかと思います。また、皇憐であれば金言のような者の気配を感じることも出来ますし、触れが届かないような僻地に隠れ住む者も見るけられるでしょう。何より、彼の力を使えば馬よりも速く国を駆けることができます。」
「…お前、今俺を馬扱いしたか?」
「…緊張感がないわね、もう…。」
皇憐に呆れていると、皇帝は苦笑しながらも私たちの案を了承してくれた。恐らく長旅になるだろう。
翌日には出立することにして、会議はお開きになった。
秀明は勉強に精を出しつつ、怨念にまつわる研究も行っておりかなり多忙になっていた。
「皇憐、何人までなら乗せて飛べるの?」
私の部屋まで続く回廊の角、立派な桜の幹に腰掛けた皇憐に問うた。
最近の皇憐はよくここに居る。今までの皇憐の定位置は桜林、たまに蓮池だったのに、いつの間にか定位置が増えていた。
「ん〜、体格にもよるが10人くらいじゃねぇか?」
「すごい…、それなら宮殿へ1度も戻らずに国を回れそうね。」
立ったままの私が回廊の柵に触れながら言うと、皇憐は嫌そうな顔をした。
「あのな、重さを全く感じないわけじゃねぇんだぞ? っつうか、俺は馬じゃねぇ。」
「もう、まだ言ってるの? あんなに神々しい馬がいるわけないじゃない。」
そう言うと、皇憐はまんざらでもなかったようで、気持ち悪くニヤニヤしていた。
そして翌日、私たちは旅立った。
皇憐はある程度低空飛行していれば気配を感知できるとのことだったので、基本は低空飛行での移動だった。
国民は龍の存在を知っているので大きな騒ぎにはならなかったものの、この災厄の中現れた龍ということで、毎日拝まれた。
「拝まれても何もしてやれねぇんだけどな…。」
「まぁまぁ、その何かができるようになるための旅じゃない。」
そう言うと、皇憐は苦笑した。
そうして旅をしていくうち、北の都市で木通を。西の森の中で焔を。南の海の孤島で水凪と出会った。
簡単に協力を得られたわけではなかった。協力を得るのに時間がかかった者もいた。彼ら同士の仲も決して良くない。
けれど皆、同じ孤独を抱えた者たちだった。
「調べたところ、母親の胎内にいる際に怨念の影響を受けたようです。母親は、出産後死亡しています。」
秀明がそう述べると、皇帝は「ふむ」と頷きながら金言を見た。私の膝の上に座っていた金言は身を固くした。髪を撫でてやると、安心したように体の力を抜いた。
「怨念に適応した例、ということか?」
「そうなります。」
いつもと違い、凛とした秀明はかっこよかった。風格は既に皇帝並み。将来が楽しみだ。
「他にも各地に金言のような者がいるはずです。怨念への対処法はまだ分かっていませんが…、霊力のある者や、金言のような者がもっと必要です。」
「分かった。国中に触れを出そう。」
「あともう1つ。桜琳と皇憐に国を巡って来てほしいのです。」
皇帝は目を見開いて私と皇憐を見た。私と皇憐は頷いた。
「宮殿から出られない秀明様に代わって、国の状況を実際に見る必要があるかと思います。また、皇憐であれば金言のような者の気配を感じることも出来ますし、触れが届かないような僻地に隠れ住む者も見るけられるでしょう。何より、彼の力を使えば馬よりも速く国を駆けることができます。」
「…お前、今俺を馬扱いしたか?」
「…緊張感がないわね、もう…。」
皇憐に呆れていると、皇帝は苦笑しながらも私たちの案を了承してくれた。恐らく長旅になるだろう。
翌日には出立することにして、会議はお開きになった。
秀明は勉強に精を出しつつ、怨念にまつわる研究も行っておりかなり多忙になっていた。
「皇憐、何人までなら乗せて飛べるの?」
私の部屋まで続く回廊の角、立派な桜の幹に腰掛けた皇憐に問うた。
最近の皇憐はよくここに居る。今までの皇憐の定位置は桜林、たまに蓮池だったのに、いつの間にか定位置が増えていた。
「ん〜、体格にもよるが10人くらいじゃねぇか?」
「すごい…、それなら宮殿へ1度も戻らずに国を回れそうね。」
立ったままの私が回廊の柵に触れながら言うと、皇憐は嫌そうな顔をした。
「あのな、重さを全く感じないわけじゃねぇんだぞ? っつうか、俺は馬じゃねぇ。」
「もう、まだ言ってるの? あんなに神々しい馬がいるわけないじゃない。」
そう言うと、皇憐はまんざらでもなかったようで、気持ち悪くニヤニヤしていた。
そして翌日、私たちは旅立った。
皇憐はある程度低空飛行していれば気配を感知できるとのことだったので、基本は低空飛行での移動だった。
国民は龍の存在を知っているので大きな騒ぎにはならなかったものの、この災厄の中現れた龍ということで、毎日拝まれた。
「拝まれても何もしてやれねぇんだけどな…。」
「まぁまぁ、その何かができるようになるための旅じゃない。」
そう言うと、皇憐は苦笑した。
そうして旅をしていくうち、北の都市で木通を。西の森の中で焔を。南の海の孤島で水凪と出会った。
簡単に協力を得られたわけではなかった。協力を得るのに時間がかかった者もいた。彼ら同士の仲も決して良くない。
けれど皆、同じ孤独を抱えた者たちだった。