龍は千年、桜の花を待ちわびる
「ごめん、このまま話すね。」
秀明は私を抱き締めたまま、急に声色を変えた。その声色から重要な話と判断して、私は涙を引っ込めて頷いた。
「儀式の前夜、桜琳と皇憐が一晩をともに過ごしたことで、不義を疑ってる者がいる。」
そう言われて、私は凍りついた。
あの時は半ばヤケクソで皇憐との子が欲しいなどと言ったが、冷静に考えれば完全に今後の信頼を失う問題だ。
「……すごく訊きにくいんだけど、君はまだ乙女のまま…?」
無言でそっと頷くと、秀明が安堵したのが伝わってきた。
「僕は幸運な男だ…。」
「え…?」
「いや、こっちの話。それでなんだけど、桜琳が懐妊していた場合、皇后に相応しくないって言っててね。」
「それって…。」
「そう。皇憐を元々良く思ってなかった者たちだよ。」
皇憐は長く宮廷にいた分権力が絶大すぎたため、表には出さないものの反感を持つ者が少なからずいた。
しかも、そんな皇憐と恋仲だった私が皇后になろうというのだ。反対は必至だろう。
「本来なら年齢的に今すぐにでも結婚したいところだけど、僕が18になってからにしようと思うんだ。」
秀明はまもなく17になる。ということは、あと1年と少し。
「それまでの間に桜琳の懐妊や出産がなければ、彼らも黙るだろう。幸い桜琳の部屋にも兵がついたから、堕胎なんて動きがあればすぐに情報が回る。結婚までの間に何もなければ、僕らの勝ちだ。」
そう言われて、私は強く頷きながら秀明の背中にそっと腕を回した。
「絶対に認めさせてみせるわ。反乱だって、絶対に起こさせたりしない。」
秀明と手を取り合って、できることは何だってやろう。
私たちは離れると、共に蓮池の対岸を見た。
東屋からは丁度桜林が見える。抜けるような青空と、それに映える桜。桜吹雪が雪のようだ。
皇憐が守ってくれた世界で生きていく。
皇憐が守ってくれた世界を、さらに守って後世に繋いでいく。強固なものにしていく。
私と秀明はそう決意を固めた。
秀明は私を抱き締めたまま、急に声色を変えた。その声色から重要な話と判断して、私は涙を引っ込めて頷いた。
「儀式の前夜、桜琳と皇憐が一晩をともに過ごしたことで、不義を疑ってる者がいる。」
そう言われて、私は凍りついた。
あの時は半ばヤケクソで皇憐との子が欲しいなどと言ったが、冷静に考えれば完全に今後の信頼を失う問題だ。
「……すごく訊きにくいんだけど、君はまだ乙女のまま…?」
無言でそっと頷くと、秀明が安堵したのが伝わってきた。
「僕は幸運な男だ…。」
「え…?」
「いや、こっちの話。それでなんだけど、桜琳が懐妊していた場合、皇后に相応しくないって言っててね。」
「それって…。」
「そう。皇憐を元々良く思ってなかった者たちだよ。」
皇憐は長く宮廷にいた分権力が絶大すぎたため、表には出さないものの反感を持つ者が少なからずいた。
しかも、そんな皇憐と恋仲だった私が皇后になろうというのだ。反対は必至だろう。
「本来なら年齢的に今すぐにでも結婚したいところだけど、僕が18になってからにしようと思うんだ。」
秀明はまもなく17になる。ということは、あと1年と少し。
「それまでの間に桜琳の懐妊や出産がなければ、彼らも黙るだろう。幸い桜琳の部屋にも兵がついたから、堕胎なんて動きがあればすぐに情報が回る。結婚までの間に何もなければ、僕らの勝ちだ。」
そう言われて、私は強く頷きながら秀明の背中にそっと腕を回した。
「絶対に認めさせてみせるわ。反乱だって、絶対に起こさせたりしない。」
秀明と手を取り合って、できることは何だってやろう。
私たちは離れると、共に蓮池の対岸を見た。
東屋からは丁度桜林が見える。抜けるような青空と、それに映える桜。桜吹雪が雪のようだ。
皇憐が守ってくれた世界で生きていく。
皇憐が守ってくれた世界を、さらに守って後世に繋いでいく。強固なものにしていく。
私と秀明はそう決意を固めた。