龍は千年、桜の花を待ちわびる
『……皇憐。聞こえる? ごめんね、遅くなって。』
間違いない、秀明の声だ。
秀明が逝ったと聞かされた時、俺は動揺した。『また会おう』と言った秀明を信じていた。
けれど、やはり『死』は何度聞かされても辛いものだった。
それが1000年経って、約束通り戻って来やがった。本当に、桜琳だけじゃなく、秀明も。
「…なんだ皇憐。貴様、泣いておるのか?」
「…泣くわけねぇだろ。」
本当に泣いてなどいなかった。
けれど、この言葉に言い表し難い感情を表すのに1番手っ取り早い方法の1つが、涙を流すことだというのは間違いなかった。
「貴様もいつの間にか、人の子のようになったものだな。」
そう言われて、俺は固まった。そして、腹を抱えて笑った。
「儂は貴様が奴に組みする前の姿を知っておる。冷酷で無慈悲な、龍そのものじゃった。」
「……そうだな。」
桜琳と出逢って、自分の弱さや脆さを知った。死の恐怖を知った。生きることの恐怖を知った。
「お前らの苦しみ、この1000年かけてちゃんと理解してきたつもりだったんだけどな。今頃付いたのか?」
「ふん! そんなもの知らんわ!」
秀明が近くに居るせいだろう、普段より外の会話が聞こえてくる。
『皇憐にもだけど、皆にも。遅くなってごめんね。特に桜琳、辛かったでしょ?』
『秀、明っ…。』
『ごめんね。』
結が、泣いてる。
そりゃそうだ。最後に結に見せてしまった光景を思い出しながら、俺は苦笑した。
秀明が来るまでどうしていいか分からず、けれどどうにかしなければならないと相当気を張っていたに違いない。
秀明が来てくれてよかった。アイツが肩の力を緩めることができてよかった。
秀明が居ることに安心しているのは外の連中だけじゃない。俺も、同じだ。
『これから、怨念の『成仏』を行うよ。』
そう聞こえた瞬間、怨念が動揺した。
けれど、成仏の前に封印の解放を行うと聞いた瞬間、歓喜して封印の中が騒がしくなった。その間に秀明を殺せば、成仏の儀式はできなくなる。
「おお、ようやく儂の積年の怨みを果たす時…!!」
秀明は封印を行った人物でもあるが、始皇帝の孫でもある。怨念からすれば、これ以上ない復讐相手だ。
『終わらせよう。1000年もかかってしまったけど…、この因縁も、悲しみも。さぁやるよ、皆。決着をつけよう。』
きっと外では皆が各々決意を固めているに違いない。けれど、それはこちらも同じ。
(さて…。封印が解かれるとなっちゃあ、俺も『本気』を出させてもらうかな。)
怨念は歓喜で大騒ぎだった。
「おおお、嬉しや! 嬉しや! 1000年前のやり直しじゃ!!」
「お前らの好きにはさせねぇよ。」
「黙れ龍! 不老不死の貴様になど用はない!」
「いい加減さっさと成仏しやがれ怨念ども!」
秀明。こっちもいつでも準備万全だ。
お前の言う通り、決着をつけようじゃねぇか。
間違いない、秀明の声だ。
秀明が逝ったと聞かされた時、俺は動揺した。『また会おう』と言った秀明を信じていた。
けれど、やはり『死』は何度聞かされても辛いものだった。
それが1000年経って、約束通り戻って来やがった。本当に、桜琳だけじゃなく、秀明も。
「…なんだ皇憐。貴様、泣いておるのか?」
「…泣くわけねぇだろ。」
本当に泣いてなどいなかった。
けれど、この言葉に言い表し難い感情を表すのに1番手っ取り早い方法の1つが、涙を流すことだというのは間違いなかった。
「貴様もいつの間にか、人の子のようになったものだな。」
そう言われて、俺は固まった。そして、腹を抱えて笑った。
「儂は貴様が奴に組みする前の姿を知っておる。冷酷で無慈悲な、龍そのものじゃった。」
「……そうだな。」
桜琳と出逢って、自分の弱さや脆さを知った。死の恐怖を知った。生きることの恐怖を知った。
「お前らの苦しみ、この1000年かけてちゃんと理解してきたつもりだったんだけどな。今頃付いたのか?」
「ふん! そんなもの知らんわ!」
秀明が近くに居るせいだろう、普段より外の会話が聞こえてくる。
『皇憐にもだけど、皆にも。遅くなってごめんね。特に桜琳、辛かったでしょ?』
『秀、明っ…。』
『ごめんね。』
結が、泣いてる。
そりゃそうだ。最後に結に見せてしまった光景を思い出しながら、俺は苦笑した。
秀明が来るまでどうしていいか分からず、けれどどうにかしなければならないと相当気を張っていたに違いない。
秀明が来てくれてよかった。アイツが肩の力を緩めることができてよかった。
秀明が居ることに安心しているのは外の連中だけじゃない。俺も、同じだ。
『これから、怨念の『成仏』を行うよ。』
そう聞こえた瞬間、怨念が動揺した。
けれど、成仏の前に封印の解放を行うと聞いた瞬間、歓喜して封印の中が騒がしくなった。その間に秀明を殺せば、成仏の儀式はできなくなる。
「おお、ようやく儂の積年の怨みを果たす時…!!」
秀明は封印を行った人物でもあるが、始皇帝の孫でもある。怨念からすれば、これ以上ない復讐相手だ。
『終わらせよう。1000年もかかってしまったけど…、この因縁も、悲しみも。さぁやるよ、皆。決着をつけよう。』
きっと外では皆が各々決意を固めているに違いない。けれど、それはこちらも同じ。
(さて…。封印が解かれるとなっちゃあ、俺も『本気』を出させてもらうかな。)
怨念は歓喜で大騒ぎだった。
「おおお、嬉しや! 嬉しや! 1000年前のやり直しじゃ!!」
「お前らの好きにはさせねぇよ。」
「黙れ龍! 不老不死の貴様になど用はない!」
「いい加減さっさと成仏しやがれ怨念ども!」
秀明。こっちもいつでも準備万全だ。
お前の言う通り、決着をつけようじゃねぇか。