龍は千年、桜の花を待ちわびる
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秀明は広場の四隅に何かを置くと、祭壇に戻って来て言った。
「曲は変わらず『桜恋歌』。皆、弾けるよね?」
皆は笑顔で頷いた。それを見て秀明も笑顔で頷くと、私を振り返った。
「桜琳は僕の側に居てね。」
「分かった。」
「一応この空間に防壁を張るよ、怨念が外に漏れ出ないように。天を貫く防壁だから恐らく大丈夫だとは思うけど、封印した時の量の怨念が出てきたら結構大変かもね…。」
皆は神妙な面持ちで頷いた。
「あと、僕ら全員の周りにも防壁を張るよ。演奏を続けている間の身の安全は保証する。だけど、演奏を止めると同時に僕らの周りの防壁は消えるから、そこからは自分の身を守りつつ、僕と桜琳を守って欲しい。」
「待って、私ここに居ていいの…? その感じだと邪魔になっちゃうんじゃ…。」
そう問う私に、秀明は優しく微笑んだ。
「僕がどうして封印の曲に『桜恋歌』を選んだか、言ってなかったかな。それは、『強い思い』が力になるからだよ。あの曲には桜琳の強い思いが込められてる。」
「強い思い…。」
「桜琳の気持ちもちゃんと『力』になるんだよ。特に、皇憐のね。」
秀明はお茶目に笑うと、「後で皇憐に怒られるんだろうなぁ」なんてぼやいていた。
「私の思いが力になるなんて、考えたこともなかった…。」
「なるよ。なんせ相手は『怨念』。要するには『強い思い』だからね。君は無力なんかじゃないよ。昔から、ね。」
私は口元を手で覆った。先程まで泣いていたせいで、涙がまた零れてしまう。
秀明はそんな私を見て微笑んだかと思うと、一気に表情を引き締めて皆を見渡した。
「そういう訳だけど…、皆、いける?」
皆はそれぞれ頷いた。
「空…この曲大好き…。」
「この1000年で磨いた私の腕も披露しようではないか。」
「俺だって毎日吹いてたからな!」
「俺も、奏でない日はなかった。」
「おや、皆して珍しく気が合うじゃないか。」
鬼の皆は強気な笑顔で互いに顔を見合った後、そのまま配置へと向かった。
私は先程零れてしまった涙を拭った。
その間に、秀明は封印の箱に貼ってあった2枚の札を剥がした。
「桜琳は声を掛けてあげて。特に、皇憐に。」
「わ、分かった。」
「僕の側から絶対に離れないでね。」
「うん。」
皆が配置についたのを確認すると、秀明は印を結んだ。
すると、先程秀明が四隅に置いた点と点が繋がって天を貫く四角い壁ができ、私たちそれぞれを包む円球状の壁ができた。
「これって…。」
「そう、結界。向こうで『陰陽術』なんて素晴らしいものに出合えてよかったよ。」
そう言って笑った後、秀明は声を張り上げた。
「演奏を始めて!」
皆は顔を見合わせ、一斉に演奏を始めた。
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秀明は広場の四隅に何かを置くと、祭壇に戻って来て言った。
「曲は変わらず『桜恋歌』。皆、弾けるよね?」
皆は笑顔で頷いた。それを見て秀明も笑顔で頷くと、私を振り返った。
「桜琳は僕の側に居てね。」
「分かった。」
「一応この空間に防壁を張るよ、怨念が外に漏れ出ないように。天を貫く防壁だから恐らく大丈夫だとは思うけど、封印した時の量の怨念が出てきたら結構大変かもね…。」
皆は神妙な面持ちで頷いた。
「あと、僕ら全員の周りにも防壁を張るよ。演奏を続けている間の身の安全は保証する。だけど、演奏を止めると同時に僕らの周りの防壁は消えるから、そこからは自分の身を守りつつ、僕と桜琳を守って欲しい。」
「待って、私ここに居ていいの…? その感じだと邪魔になっちゃうんじゃ…。」
そう問う私に、秀明は優しく微笑んだ。
「僕がどうして封印の曲に『桜恋歌』を選んだか、言ってなかったかな。それは、『強い思い』が力になるからだよ。あの曲には桜琳の強い思いが込められてる。」
「強い思い…。」
「桜琳の気持ちもちゃんと『力』になるんだよ。特に、皇憐のね。」
秀明はお茶目に笑うと、「後で皇憐に怒られるんだろうなぁ」なんてぼやいていた。
「私の思いが力になるなんて、考えたこともなかった…。」
「なるよ。なんせ相手は『怨念』。要するには『強い思い』だからね。君は無力なんかじゃないよ。昔から、ね。」
私は口元を手で覆った。先程まで泣いていたせいで、涙がまた零れてしまう。
秀明はそんな私を見て微笑んだかと思うと、一気に表情を引き締めて皆を見渡した。
「そういう訳だけど…、皆、いける?」
皆はそれぞれ頷いた。
「空…この曲大好き…。」
「この1000年で磨いた私の腕も披露しようではないか。」
「俺だって毎日吹いてたからな!」
「俺も、奏でない日はなかった。」
「おや、皆して珍しく気が合うじゃないか。」
鬼の皆は強気な笑顔で互いに顔を見合った後、そのまま配置へと向かった。
私は先程零れてしまった涙を拭った。
その間に、秀明は封印の箱に貼ってあった2枚の札を剥がした。
「桜琳は声を掛けてあげて。特に、皇憐に。」
「わ、分かった。」
「僕の側から絶対に離れないでね。」
「うん。」
皆が配置についたのを確認すると、秀明は印を結んだ。
すると、先程秀明が四隅に置いた点と点が繋がって天を貫く四角い壁ができ、私たちそれぞれを包む円球状の壁ができた。
「これって…。」
「そう、結界。向こうで『陰陽術』なんて素晴らしいものに出合えてよかったよ。」
そう言って笑った後、秀明は声を張り上げた。
「演奏を始めて!」
皆は顔を見合わせ、一斉に演奏を始めた。