龍は千年、桜の花を待ちわびる
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「あぁ、外じゃ…!!」
天にこだまする大きな声で、ジジイは歓喜を露わにした。
「忌まわしい小童め…! 殺してくれるわ!!」
そう言いながら、今度は大量の怨霊を地上へと雨の如く降らせ始めた。
(コイツの目はどこに付いてんだ…!)
目線の先が分かれば対処も出来るだろうが、靄の塊であるコイツらのどこにそんな感覚器官があるのか、皆目見当が付かない。
俺は仕方なく全妖力を放ちながらドス黒い靄に巻き付くことしかできなかった。
せめて少しでも、地上に降る怨霊の数を減らせれば。
「邪魔をするな皇憐!!」
「邪魔するに決まってんだろ!! 下で戦ってんのは、俺の大事な奴らだ! 全員死なせてたまるかよ!」
結だけじゃない。
今となってはもう、1000年も共に戦ってきた仲間だ。秀明も、鬼の奴らも、誰1人死なせやしない。
というのも、俺には1つ気になっていることがあった。
鬼の奴らは不老不死だ。だがそれはあくまで怨念の影響による突然変異であって、これ程大量の怨霊を相手にした時、それがどうなるか…。
「ああ忌々しい…! 憎い! 貴様の水晶を持っているせいで、鬼の奴らに手出しできん…!」
「あぁ?」
「あの水晶、貴様の力だけでなく加護まで付与されておるのか…!!」
『加護』。
俺は思わず薄く笑んだ。数千年、人を傷付ける能力しか持っていないと思っていたというのに。
まさか、本当に『人を守る力』があったとは。
(なら今は祈るしかねぇか、アイツらの無事を…!)
下では秀明が祝詞を読み始めていた。その側には結が居る。
そしてそれを取り囲むように、鬼の奴らがそれぞれ攻撃を繰り出して怨霊を撃退していた。
空は風を。
水凪は水を。
金言は石や土を。
焔は火を。
木通は植物を。
そして不意に、声が聞こえた。
「皇憐!!! 頑張って!!!」
馬鹿みたいに張り上げた声は、戦闘の最中だというのにしっかりと俺の耳に届いた。
思わず笑みが溢れる。
「あんな風に言われちゃあ、期待に応えるしかねぇよな!!」
俺は怨念に巻き付く力を強めると、そのまま妖気をさらに高め、妖気で怨念全体を覆った。
「な、何をする! 貴様っ…!」
「秀明がさっき言ってたろ! 『強い思いは力になる』ってな!」
「ぐっ…! 離せ!」
何とか俺から逃れようともがくも、俺から逃げることは到底できそうになかった。
「そろそろ素直になれよ、ジジイ。お前ら本当はもう…」
そこまで言った瞬間、下から眩い光が立ち昇ってきた。
いつの間にか秀明が祝詞を唱え終わり、巻物を火に焚べたようだ。
「嫌じゃ、嫌じゃ…!!!」
「逃さねぇよ! もう楽になれ!」
逃れようとする靄を、俺は最後まで離さなかった。
そして怨念と一緒に、眩い光の中に包まれていった。
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「あぁ、外じゃ…!!」
天にこだまする大きな声で、ジジイは歓喜を露わにした。
「忌まわしい小童め…! 殺してくれるわ!!」
そう言いながら、今度は大量の怨霊を地上へと雨の如く降らせ始めた。
(コイツの目はどこに付いてんだ…!)
目線の先が分かれば対処も出来るだろうが、靄の塊であるコイツらのどこにそんな感覚器官があるのか、皆目見当が付かない。
俺は仕方なく全妖力を放ちながらドス黒い靄に巻き付くことしかできなかった。
せめて少しでも、地上に降る怨霊の数を減らせれば。
「邪魔をするな皇憐!!」
「邪魔するに決まってんだろ!! 下で戦ってんのは、俺の大事な奴らだ! 全員死なせてたまるかよ!」
結だけじゃない。
今となってはもう、1000年も共に戦ってきた仲間だ。秀明も、鬼の奴らも、誰1人死なせやしない。
というのも、俺には1つ気になっていることがあった。
鬼の奴らは不老不死だ。だがそれはあくまで怨念の影響による突然変異であって、これ程大量の怨霊を相手にした時、それがどうなるか…。
「ああ忌々しい…! 憎い! 貴様の水晶を持っているせいで、鬼の奴らに手出しできん…!」
「あぁ?」
「あの水晶、貴様の力だけでなく加護まで付与されておるのか…!!」
『加護』。
俺は思わず薄く笑んだ。数千年、人を傷付ける能力しか持っていないと思っていたというのに。
まさか、本当に『人を守る力』があったとは。
(なら今は祈るしかねぇか、アイツらの無事を…!)
下では秀明が祝詞を読み始めていた。その側には結が居る。
そしてそれを取り囲むように、鬼の奴らがそれぞれ攻撃を繰り出して怨霊を撃退していた。
空は風を。
水凪は水を。
金言は石や土を。
焔は火を。
木通は植物を。
そして不意に、声が聞こえた。
「皇憐!!! 頑張って!!!」
馬鹿みたいに張り上げた声は、戦闘の最中だというのにしっかりと俺の耳に届いた。
思わず笑みが溢れる。
「あんな風に言われちゃあ、期待に応えるしかねぇよな!!」
俺は怨念に巻き付く力を強めると、そのまま妖気をさらに高め、妖気で怨念全体を覆った。
「な、何をする! 貴様っ…!」
「秀明がさっき言ってたろ! 『強い思いは力になる』ってな!」
「ぐっ…! 離せ!」
何とか俺から逃れようともがくも、俺から逃げることは到底できそうになかった。
「そろそろ素直になれよ、ジジイ。お前ら本当はもう…」
そこまで言った瞬間、下から眩い光が立ち昇ってきた。
いつの間にか秀明が祝詞を唱え終わり、巻物を火に焚べたようだ。
「嫌じゃ、嫌じゃ…!!!」
「逃さねぇよ! もう楽になれ!」
逃れようとする靄を、俺は最後まで離さなかった。
そして怨念と一緒に、眩い光の中に包まれていった。