佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
「もう、簡単なものしかできないんだから、褒めても、これ以上、何も出てこないよ」
「そうか?俺としては食事の後に、食べたいものがあるんだけど、提供してくれないのか?」
含みのある甘い声と視線が、向かいに座った辰巳から送られ、それが何を意味するかしおりもわかっている。
「もう、わかってるくせに。久しぶりに会えて嬉しいのは、私もなんだよ。とびっきりの下着で誘惑するからね」
「可愛いこと言う。寝かせてやれないぞ」
ニヤリと揶揄う辰巳に、しおりは、顔を赤くした。
「お手柔らかにお願いします」
「あーぁ、どうして俺の彼女は、こんなに可愛いかな」
その夜は、久しぶりの逢瀬に盛り上がる2人だった。
そうなると、しおりは、疲れて起き上がることも辛い。
「悪い、無理させたな。見送りしなくていいから、また、連絡する」
「うん、私もするね。それと、繁忙期過ぎたら、辰巳さんのとこに泊まりに行く」
「楽しみに待ってる」
玄関で別れのキスをして、辰巳は共有廊下へ出て、エレベーターを待っていた。
すると、階段を登って来る足音に振り返ると、昨夜、しおりといた男が、朝帰りだとわかるようにスーツを着崩して気だるそうに欠伸をしていた。