佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
「んっ?」
赤面する香織は、加賀とのあれこれを思い出したのだった。
「なんでもないです。そんなことより、露天風呂入りましょうよ」
昼間に散々あちらの部屋の露天風呂を堪能したと言えないしおりは、またのぼせないようにしようと思うのだ。
「…しおり、さん?」
「何?」
「いえ、このお湯熱いですね」
「そ、そうね…」
手のひらをうちわ代わりにして、熱さでほてる顔を冷ます香織の視線は、しおりのうなじから背中にある、いくつものキスマークに向いている。
そんなことになっているとは知らないしおりも、香織の体のあちこちにあるキスマークに頬を熱くし、視線を逸らすのだ。
(加賀さんって情熱的なのね)と。
「…今日ね、零士と正式に恋人になったの」
「うふふ、そうでしたか。昨日と雰囲気変わりましたもん」
まあ、背中にある痕からもわかるのだが、恥ずかしがるしおりが想像できる香織は、そこには触れず口を閉すのだ。
「そうかな…」
頬に両手を当てて照れ笑いのしおり。香織は女ながら、顔が赤くするしおりを可愛いと思うのだから、零士は相当だろうと思うのだ。
「恋人ごっこって聞いて心配でしたけど、よかったです」