佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋

もちろん、零士も他の女だったら、そんなことはしてこなかったのだが、愛する女だからこんな時は世話を焼きたいのだ。

「ちょっと待ってろよ」

浴室に行き、何やら掃除してお湯を出してきたらしい。

「しおりのことだから掃除はしてるんだろうけど、さっとしてお湯を沸かしてきたから、それまで、朝ごはん食べよう」

「えっ、冷蔵庫に何もないよ」

「だから、コンビニで買ってきた」

先程、テーブルに置いた袋は、どうやらそれだったらしい。

「ほら、おいで」

手を伸ばして抱き上げようとする零士に甘えて、抱きついた。

「えっ、どうした?昨日無理させたから?支えてもダメか?」

「ふふふ、激しかった」

「あー自覚はある」

「そうじゃなくて、戻ってきてくれて嬉しい」

「なに、それ?」

「起きたらいなかったから、一瞬、抱いたから気が済んだのかなぁって思ってしまったの。でも、零士のこと信じてるから思い直し…あれ?」

「しおり、俺の気持ちが、まだ伝わってないようだね。お風呂でたっぷり教えてあげるから、朝食はお預け」

横抱きに上げられて、向かう先は浴室だった。

結局、お湯も溜まっていない浴槽で、散々な目にあうしおり。
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