佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
「例のお見合いだが、連絡はいってるな。うち(銀行)としては、繋がりをもつのに、いい相手だと思う」
「お見合いさせられる当の本人は時間と場所以外に何も知らないのに、叔父さんは誰か知ってるんですね。相手は俺が知っている相手ってことですか?」
刺々しい物言いで揺さぶる零士に叔父は表情一つ変えず淡々としている。
「そう、カリカリするな。向こうから是非お前にときた話だ」
「迷惑な話です」
「そういうな。最近、東雲御用達の宿に女と行ったそうだな。あちこちの女と遊んでないで、そろそほ身を固めたらどうだ?」
「お詳しいですね。好きな女ができたので遊びはやめました。彼女と一緒になりますよ」
「東雲の嫁に相応しい女じゃないだろ。目を覚ませ」
「どこまでお調べなんです?あなた達がなんと言おうと俺は彼女以外と結婚するつもりはありません」
「出会って、たかだか数カ月の付き合いで何がわかる。それなら、生まれも育ちもいいお嬢さんと結婚しても変わらんだろ」
「愛のない結婚などしない方がましです。それに俺は好きで東雲の家に生まれたわけじゃありませんよ。好きな女ができた以上、彼女を裏切るような行為なんてしたくない。お見合い相手の方にも失礼なので、今回、なかったことにしてください」