佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
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零士との恋人関係が良好なしおりは、毎日が充実していた。
待つだけの女だったしおりに、本来の恋人とはこうあるべきだと知らしめてくれる零士は、毎日、互いの部屋を行き来して、抱き合うだけが恋人ではないのだと教えてくれる。
帰宅時間が合えば待ち合わせして帰る日もあれば、休日は、迎えに来たりとしてくれる零士。
最近では、料理というものを覚えだした零士の元に帰るしおりだった。
「ただいま」
「おかえり」
「零士もおかえりなさい」
「ただいま」
しおりの腰を抱いた零士は、チュッとしおりのおでこに愛情を示す。
しおりも、零士の胸に抱きついて愛情表現をするのだ。
「いい匂い。今日は、カレー作ったの?」
「市販のルーだけどな」
「作ってくれてありがとう」
料理などしなかった零士の変わりように、しおりは感謝して、毎回、お礼を伝える。
「うまくできたか自信ないけど、食べるか」
「うん。食べる」
男飯らしく、食材は大胆な大きさである。
「いただきます」
相変わらず、しおりが髪をまとめて、気持ちよく食べる姿に零士は見惚れる。
「…うん、美味しいよ」
「よかった。まだ、野菜剥いて煮込む料理しかできないけどな」
「…十分だよ。零士が作ってくれるのは嬉しいけど、私の立場が…朝食しか作ってあげれないんだよ」