佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋

「少しじゃ終わらなくてごめんな。…シャワーしたらデートしよう」

一日中一緒の部屋にいたら、しおりを抱くことしか考えられない零士なりに、このままではいけないと思い、恋人らしいことをしてあげたいと思ったのだ。

女と経験は豊富でも、恋人関係は初めてで、デートなんてしたこともない零士だが、部屋でしおりと2人きりだと性欲が衰えない。

こんなに獣だったとは、と、我慢できない自分を自笑するのだった。

「…シャワーは、別だからね」

警戒心MAXのしおりから、信用度が落ちていると思った零士は、苦笑い。

「もちろん。先にシャワーしておいで」

ガバッと起きたしおりは、生まれたての子鹿のように足をブルブルと震わせ悪態をつきながら浴室へ向かう。

(バカ、性欲バカなの)

こんな姿になるまで、抱き潰した元凶がしおりの足元を心配して、すぐに助けられるよう少し距離を取り浴室まで見守っている。

抱かれる喜びを知ったしおりは、やぶさかでもないのだから、本気で怒れないのだ。

腹立たしいのに、優しさが嬉しい。

零士がシャワーを浴びている間に、デートの為に、身支度をしに部屋に戻ったしおりも、デートというものを前の恋でしたこともない。
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