佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
13
翌日、療養中の祖父の元へ向かった。
「爺さん、元気そうだな」
「零士、お前もな。いろいろ聞いてるぞ」
「なぁ、今日の見合い、断っていいよな」
「なんじゃ、改まって」
「東雲の為に結婚する気はないって伝えにきた」
「好きな女ができたからだろ」
「そうだよ」
「いいんじゃないのか。それもお前が望むなら、自分の道は自分で開いていけばいい。好きな女がいるのに東雲に生まれたからと、好きでもない女と結婚しても地獄だろ。だが、今まで東雲の名を利用してきて、家を捨てることは許されないぞ。いずれお前には芝園を任せるつもりでいるのだからな」
「だから、こうしてきたんだろ。例え、爺さんの旧知の中の元西城議員の孫だとしても、好きな女以外と結婚する気はないって伝えたくて」
「ははは、好きにするといい。芝園は大きくなった。今更、奴の力など必要としないほどにな。お前の父と叔父は自分で説得しろ」
「わかってる。好きな女と一緒になれるなら、いずれ芝園を更に大きくして日本一の銀行にしてやるよ」
「大きく出たな。だが、今のお前では戯言でしかないの」
「今の俺じゃ、なんの力もないのはわかってる。だけど、彼女と一緒になれれば、どんな困難も乗り越えてやるって思うんだ」