佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
「言えるわけないだろ。大した害のない他のストーカー女と違って、あの女は爺さんの知人の孫なんだぜ」
「はぁっ…麗香嬢以外からもストーカー被害に遭ってるというのか。兎に角、男も女も関係ない。いいか、知らないとはいえ見合いを受けてしまった。ここで見合いもせず断っても、解決策にならない」
「なら、どうすればいいんだよ」
「決まっている。見合いの場をストーカー被害の話し合いの場に変えればいい。丁度、弁護士先生もおられるからな」
2人の正面に座る男性が、零士を見て頷く。
「まさか…」
「お前は、いつも相談せず、物事を解決しようとする。こんな時ぐらい、親らしいことをさせろ。そして、幸せな結婚をして孫を抱かせてくれ」
「結局、そこなのかよ」
ふふふと、笑う悪い表情が自分と同じで、零士はこの人の子なのだと実感させられる。
そして、創立パーティーでは、そんなことになっていると思わない西城 麗香は、零士の隣に立ち、あたかも関係があるように振る舞う。
「零士さんの好きな赤ワイン持ってきました。どうぞ」
ウンザリ顔で、心の底ではビール派だと呟き、彼女との距離を取ろうとするのだが、同僚達の手前、無下にもできず、付き纏われる時間だった。