佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
日曜日ということもあり、開店と同時に、予約のお客様に飛び込みのお客様とで、午前中から忙しい。
しおりが休憩に入れたのは、3時の時間だった。
休憩室で一人でいるしおりは、清掃時の香織の会話が思い出されて気分は落ちていた。
普段、気にしないようにしているが、心の不安を他人に言われると、考えてしまう。
辰巳は身長も高く、穏和な顔立ちで人当たりも良く、面倒見もいいので、人気が高いのだ。
しおりが入社して、一年目の年、大きなクレームを起こした。契約内容と違うと怒鳴るお客様に、一緒になって冷静な態度で対応してくれたのが辰巳だった。その後、しおりのミスに怒ることより、ミスをしないための流れなど、レクチャーしてくれて、恋に堕ちるのは必然だった。
そんな彼と付き合えたことは、しおりにとって幸せだったのだが、不安もついてきていた。
自分と同じような境遇にあって、彼に恋する人がいるとわかっているからだ。
香織の言う通り、自分が本命なのだろうかと不安でいる。本命なら、浮気なんて許せるぐらい辰巳を愛している。
例え浮気相手だとしてでも、彼の側にいられるなら…
どちらにせよ、辰巳と別れるという選択は、今のしおりにはないのだ。