佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
この娘にして、この親だと零士は呆れる。
「えぇ、この容姿なので、昔から後をつけられることはよくありました。ですので、高級とは言いませんが、それなりのマンションに住んでいたのに、大変な目にあいました。同じマンションに住みだし、マンションの管理人に恋人だと吹聴、待ち伏せ、合鍵を作られて住居侵入も。僕は東雲とは関係なく、普通の人間として過ごす会社で、東雲一族だと、そちらのお嬢様のせいで職場でもばれてしまいましたし、付き合ってもいないのに恋人気取りで迷惑です」
「はぁ?恋人じゃない?どういうことだ。聞いていた話と違うじゃないか」
「恋人で、結婚したいけど、僕は女性にだらしない男で、結婚に前向きになってくれないとでもお聞きになったのですか?」
「そうだ。実際、あちこちで遊んでいるだろ。だから、娘が不憫で見合い話でまとめてやろうと」
「権力を使おうが、恋人にも妻にもなれませんよ。麗香さん」
「零士くん、うちの麗香は器量もいいし、いい子だ。ストーカーは行き過ぎだと思うが、それだけ君のことを愛しているということじゃないか。どうだろう、交際してみないか?」
こちらの話が理解できない、こんな親を持つから、娘は常識のない人間になるのだと、零士は冷ややかに見つめた。