佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
零士の顔に執着するストーカーと違い、麗香は、社交界で見栄を張る為に誰もが羨ましく思う嫁ぎ先、誰もが羨ましく思う顔のいい夫を必要とし、優越感を満たすことができる条件にあった男が、零士だっただけのことだと思っている。
そこに、愛があるわけでもなく、憧れでもない。ただ、自己の欲望のみ。
そんな女が、おとなしく引き下がるとは思えないのだが、今は、これ以上、手の打ちようがない零士は、急に、しおりが恋しくなった。
「恋人が待ってるから帰るわ」
「こいつから恋人なんて言葉がでるなんて嬉しいね。今度、家に連れてこいよ」
「いやだね。まだ、東雲の御曹司ってバレたくないんだから、ほっといてくれよ」
親父達は、驚き顔の後、大笑いするのだ。
「逃げられそうなのか」と。
零士にとって、逃げられたらたまったものじゃない。
無欲なしおりは、東雲の家に惹かれるような女じゃないのだ。零士個人を好きでいてくれる。
だからこそ、愛しいし、惚れている。
「零士、妊娠が先でも構わないぞ。孫が抱けるなら、結婚など後でいい」
「はあ⁈親父の為に妊娠なんてさせるかよ。順番は守るさ」
「だといいんだがな…お前も東雲の男だからな」