佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
「そうよね…好きなんだもの」
心配しても、どうしようもないと、しおりは強張っていた肩を回して、表へ出ていった。
本日、最後の予約のお客様が来店された。
ホールにいる女性全員の視線を集める男は、気にも留めない様子で受付スタッフに名前を告げた。
「予約していた東雲です」
「東雲様、お待ちしておりました。本日は、機種の変更手続きでよろしいでしょうか?」
「はい」
「では、担当者が参りますので、しばらくそちらのお席でお待ち下さい」
その流れを接客中のしおりは、目の端で捉えていた。
(隣人さん)
そして、男もしおりに気がついて視界にとらえていた。
本来、彼を担当するはずの社員は、説明が長引き、まだ手が離せようで、急遽、お客様の応対が終わったしおりにまわってきた。
「佐藤さん、あのお客様の応対をお願いします」
「はい」
男の側まで近寄り、しおりは腰を落とす。
「東雲様お待たせいたしました。担当させて頂きます佐藤です。本日は機種変更のお考えでのご来店とお聞きしておりますが、どの機種にされるか決められておられますか?」
「使っている機種の新しいシリーズが発売したと知ったので、それにしようと思ってます」