佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋

通話を切った男は、そのままあるところへ連絡を入れる。

数日後に、ある週刊誌に西城議員の娘、ストーカーの殺人未遂事件という見出しでのることが決まった。

リークしたのは、もちろん、零士だ。

西城家は約束を守れなかった時は、今の地位を失う。祖父同士の仲に免じて、麗香は日本で暮らすことができなくなるだけに留められるが、東雲家の圧力により、西城の祖父は麗香に結婚という枷が嵌めることを約束していた。

アラブ系の富豪なのだが、彼の持つハーレムに入れば、2度と、日本の地を踏むことはない。

そんなことになっていると知らない麗香は、親の目を盗み、しおりに接触しようとしていたのだ。

麗香にとって、零士の妻になれたとしても、愛されることは一生ないのだが、結婚相手は望んでいた金持ちだ。喜ぶだろう。だが、その結婚も何人も妻のいる男で幸せになれるとは思えない相手だ。

麗香が、幸か不幸か、どうなろうと零士には関係のないことだった。

自分のせいでしおりが危険な目に合わせることを避けたかっただけで、守れたことにホッとして、彼女が待つ部屋に帰って行く。

「ただいま」

「おかえりなさい…」

「もう少しでできるから、待っててね」
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