佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
照れ笑いして、久しぶりに彼女の部屋を訪れた零士。相変わらず片付けてある部屋だが、彼女らしさが随所にあり、落ち着くのだ。
例の件もかたがつき、行き来するのも面倒だと思い始めた零士は、このマンションの最上階にあるファミリー向けの部屋が、最近になって空いたことを思い出す。
(少し見てくるか)
しおりとほとんど同棲しているような今の状況なので、本格的に一緒に住むことを検討するのだ。
「今日、バレンタインでしょ。ちょっと頑張って作ったの」
テーブルには、スープ、サーモンとタマネギのマリネをのせたブルスケッタ、温野菜が添えてあるステーキ、そして今日のイベントに欠かせないデザートに生チョコを並べ、グラスに、シャンパンを注いでいく。
「うわー、凄いな。生チョコ作ってくれたのか?」
「うん。ビターだから零士も食べれるでしょ」
「しおりが作ってくれたなら、甘くても食べるけど」
ふと、零士の脳裏によぎる邪な思考。
「後で膝の上に乗って食べさせてよ。バレンタインだよ」
「あっ、うん…」
頬を赤くさせるしおりに満足し、しおりの手料理を味わうのだ。
「ふー、美味しかった。さて、しおりちゃん、おいで」
手を広げてウェルカム状態に、恥ずかしがりながら生チョコを持って零士の膝の上に座る。