佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
「…東雲⁈」
「そう、俺も東雲」
「えっ、えっ…まさかの」
「東雲の御曹司です」
「………うそ。いつものように揶揄ってるんでしょ」
信じたくないせいで、顔が強張るしおり。
「ほんと」
慌てて、指輪をはずそうとするしおりの手を掴む零士は、しおりに口付けた。
「ダメだよ。もう、俺と結婚するって約束したんだからね」
「聞いてない。普通の人だと思ってたのに…私には、ムリ…そんな世界のお嫁さんなんてつとまらない」
「どうして?しおりの前では俺は変わらないよ。しおりが嫌なら、縁を切るよ。だから、別れるとか聞きたくない。言わせない」
そういうなり、口付けを深くされて、しおりの体を熟知する零士によって、家具も、なにもない部屋で抱かれるのだ。
「しおり、愛してるんだ。別れない。…もう一度、別れないって約束して」
零士の黒い愛情は、しおりが頷くまでぶつけられる。
そして、夜の暗闇を目にしたしおりの心も暗くなっていった。
今日は珍しく平和な昼の時間で、来店客もいないうちに、誰が先に休憩に入るかと順番決めが始まる。だが、ボーとして参加しないしおりと香織を残して他のスタッフはさっさと休憩に入っていく。
店内に大きなため息が2つ。