佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋

「香織は、ため息ついてどうしたの?」

「…しおりさんもどうしたんですか?」

はぁっ…とまたため息が出るのだ。

「聞いてくれますか?」

「うん、聞くよ」

「大地さん、KG綜合警備会社の御曹司だったんです。付き合っているのに、ずっと隠してたんですよ」

しおりは、一昨日に似た状況にあっていて、デジャヴを感じる。

「銀行員としか聞いてませんでした。…信用してないから御曹司ってこと隠して様子見てたんですよ。お金に目がくらむ女だと思われてることに腹が立って…私をそんな女だと思ってたんですかね」

加賀は、本来の職業のことは愛する女でも、一生秘密にしなければならない為、目に見えることだけを話したのだ。

「香織は、そんな女じゃないよ」

香織の怒りと、しおりの怒りも同じだった。

「大地さんだから、好きなのに…伝わってなかったのが悔しくて」

「わかる…そうよ、そうなのよ。御曹司だろうと貧乏人でもいいの。彼だから好きなのよ。それなのに好きだと言いながら、大事なことを秘密にしてたことよ。後から、告白する卑怯なやり方が気に入らないの」

「えっ、誰の話しですか?貧乏人はさすがに嫌ですよ」

「零士よ。零士も御曹司だったの。隠したままプロポーズするなんて卑怯だと思わない⁈頷いてから、実はって…」
< 167 / 182 >

この作品をシェア

pagetop