佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
とても気さくなご両親で、お父様は大企業の社長とは思えない、普通のおじさまで、零士が歳を重ねたら、こんな風貌になるのだろうと思わせるロマンスグレーの男性だった。お母様は、若い時から美人だったと思わせるほど、綺麗な人で、優しい話し方に好感を持てた。
大企業の奥様だからと緊張していたが、気さくに接してもらい、忙しい日程の中、突然に決まった今日のことを謝ってくれる優しい人。
「零士のわがままで、ごめんなさいね」
そんな彼女と仲良くなれそうだと思うのだ。
療養中のお爺さまも、大企業の会長とは思えない、普通のお爺ちゃんって感じで、しおりを見て、おおいに喜んでくれたことが嬉しかった。
そして、今日、同棲する為に挨拶に行きたいと言う零士が、しおりの両親と顔を合わせたのだ。
それらの顔合わせが、結婚へ向けての挨拶だと思ってもいないのだが…それは東雲家が、しおりを逃がさない為に事前に連絡を取り合い、お互いの両親同士が黙認して、一見、ただ同棲の挨拶と遊びに伺ったという設定になっているだけだった。
「うちの爺さんには、ひ孫の顔を見るまで生きててもらわないとな」
「うーん。まだまだ元気でいてほしいね。私達、今からだもん。結婚まで、まだまだだよ」