佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋

「零士、仕事あるでしょ?」

「大丈夫。俺、営業だからなんとでもなるよ」

自信満々で答える零士に、呆れるしおりだった。

だが、しおりの妊娠は、東雲家全員の望むところだった。

思っていたより早い報告を受けた零士の父と、祖父は思う。

「さすが、東雲家の血筋だ」と。

祖父も父も、政略結婚のように思われているが、実のところ、一目惚れから始まっている。

結婚よりも先に妊娠させていたのだ。

愛する女を逃がさない為に。

その事実を知る零士の母は、先にしおりに謝っていた。

『零士のわがままで、ごめんなさいね』と。

息子の為に逃してあげれないと、申し訳なく思い伝えていた。

跡継ぎを産んでくれるしおりには、できる限り、惜しみなく援助するつもりでいる。

それしか、東雲家の男に執着された女達に、言葉以外で感謝を示す方法がないのだ。

そうなるのも、東雲の家には、男しか生まれない。

それも、腹黒く、一目惚れした女性に執着するという変な男達ばかり。

彼女らを惹きつける為に、なぜか顔立ちの整った男ばかり生まれるのだ。

だから、きっと、しおりと零士の子も、いつか誰かに執着する日が来ると男達は思っている。
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