佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
【しおり➕零士】
「ダメ」
「なんで?」
「赤ちゃんが驚くでしょ」
「大丈夫だよ」
「ダメったらダメなの」
ピシリと手を振り払うしおりと零士は、生まれてくる赤ちゃんの為に、ベビー用品を購入しに赤ちゃん用品店に来ていた。
零士が欲しかった赤ちゃん用品は、しおりといちゃいちゃしたいが為に、赤ちゃんが見て楽しめる踊るおもちゃだったが、可愛さが足りなく、変な表情がしおりは気に入らないらしい。
「変な表情の方が、楽しいだろう」
「もう、しつこい。絶対に喜ばないから。もう、勝手に買えば」
その後、生まれた息子が、なぜかそれが気に入りよく笑う姿に、しおりは怪訝に見つめる日が来るのだが、まだ、もう少し先の話。
零士は、踊るおもちゃを見ている息子が1人でも楽しんでいるおかげで、しおりとのいちゃいちゃタイムがもうけれて喜ぶのも、また先の話。
「俺、幸せだよ。息子を産んでくれる奥さんと子供の為におもちゃ屋に来る日が来るなんて思わなかったよ」
東雲家なら、電話一本で済む話なのだ。
それを、こうして、あーでもないこーでもないと言い合い、家族になっていくんだなとしみじみと感じるのだ。
「まだ、調べてないから息子ってわからないよ。女の子って可能性もあるんだからね」
まだ、東雲家の血の濃さを知らないしおりは、女の子用のおもちゃを物色するのだが、零士は、男の子だと確信しているので、男の子用品を見て回る仲のいい夫婦だった。
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