佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋

数十段先に、同じように階段を登る仲間がいるおかげもあり、次々と段差を踏んで前に進めている。

一人だったら途中で根をあげて、休憩と称して、買ったばかりの缶チューハイを開けて飲んでいただろう。

2人分のカツン、カツンと鳴る靴の音が小気味よく響いていく。

階段を登りきった前方の人影が止まり、しおりは顔を上げた。

上から見下ろす男性の顔は影になり見えないが、しばらく視線を感じていた。

応援でもしてくれているのかと良い方に思考を巡らさせ、残り数十段を登りきるが、すでにそこに居たであろう男性はいなくなっていて、特に気にすることなくマンションへ足を向ける。

しおりが住むマンションは、階段を登りきった道に出て、すぐ右にある7階建の建物だ。

エントランスからロビーに入る為に施錠を解いて、郵便受けを確認し、エレベーター前に立つと、誰かが先に押していたらしくドアが開いたので、そのまま3階のボタンを押す。

上昇して止まることなく3階に着き、ドアが開いた。

すると、目の前に階段を上がって来たであろう男性がギョッとして驚き顔で、後ろに後ずさったのだ。

驚かすようなことをした覚えもないので、しおりが共有廊下に出ると、男性は顔を険しくさせる。
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