佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
「じゃあ、俺んとこ来てよ」
隣人というだけで親しくもない男だが、警戒心を抱くほど、女に不自由していないだろうとついていくことにした。
「東雲さんって、いつもそんな感じなんですか?」
「えっ、なに?」
「そんな軽い感じなんですか?って聞いてるんです」
「まぁ、普段からこんな感じだな。仕事は真面目よ」
「社会人なんですから、当たり前です」
「あはは、しおりちゃん。手厳しいね」
「私、名前教えましたっけ?」
「彼氏が呼んでたろ」
「あー、だからって名前呼ぶの許してませんけど」
「あはは、腹痛。マジいいわ。大抵の女、喜ぶのにな。しおりちゃんは違うね」
「もう、また勝手に呼んで」
「いいじゃん、俺、零士。特別に呼び捨て許してやるよ」
「上からですか?俺様ですね、東雲さんって」
「意地でも呼ばないつもりだな」
「呼ぶ間からじゃないです」
「それでこそ、しおりちゃんだ」
「私のこと何も知らないくせに、知ったふりやめてください」
「そうだけど、俺が気に入ったしおりちゃんは、俺の顔に靡かずに、思ったことをはっきり言う。そこは知っているよ」
「気に入ってもらわなくて結構です」