佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
(もう、許してやるか)
そして、『許してあげますよ』と、帰宅後に箱菓子にメッセージをつけポストに。
翌朝、ドアノブに何もないことに、少しガッカリするのだが、その夜、玄関チャイムが鳴った。
「はい」
『おれ』
「俺俺詐欺さんですか?」
画面に映る男は、困り顔でいる。
『東雲だけど』
「あー、東雲さん。どうされました?」
『意地悪言うなよ。許してくれるんだろ』
「まぁ…」
『顔も見たくないか?』
「そんなことないですけど」
『じゃあ、開けてくれよ』
しおりは、渋々とした態度で玄関ドアを開けた。
すると、両手いっぱいになる花束が目の前に出てきた。
「どうしたんですか?」
「仲直りというか、喜ぶかと思って買ってきた」
「嬉しいですけど、やり過ぎです」
(彼女でもないのに…)
「お花に罪はないので、いただきます。私だから、勘違いしませんけど、彼女でもない人にこんなことしたら勘違いするので、気をつけた方がいいですよ」
チクリと嫌味を込めるのは、誰にでもしてそうだと思ったからだ。
「花束なんて初めてだよ。それに、誰にでも勘違いさせることなんてするかよ」
(そうなんだ)
花束の影に隠れて頬を緩めるのだ。