佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
「おい、どうやって入ったか知らないがしつこいぞ。ストーカー女。警察呼ぶからな」
一瞬、誰に言っているのかわからなかったしおりは、キョトンとした。
「それ、私に言ってます⁈」
「あぁ、そうだよ。あの階段使えば諦めると思ったのに、登りきってここまでくるなんて思わなかった」
ウンザリした声で、携帯を取り出す姿にしおりは慌てた。
「あなたの勘違いです。私、ここの住人ですけど」
鞄に手を入れると、男性は警戒心を高める様子に、苦笑するしおり。
鞄の中から、部屋の鍵を出して見せ、カツンカツンと靴音を鳴らし、302号室に鍵を差した。
開錠したガチャリと鳴る音が響く。
「これで理解していただけました?」
自分の勘違いに顔を蒼白させて、男は頭を下げた。
「勘違いして申し訳ない」
「わかってもらえたらよかったです」
「失礼なことを言って、どう、お詫びをしたら…」
顔を上げた男の顔を、マジマジと見たら、整った顔立ちで、今時のイケメン俳優のように綺麗な顔をした人だった。
「いえ、謝っていただけたので、気にしないでください。それに、私の先に階段を登るあなたがいたので、頑張って登ってこれましたから」