佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
「だろ⁈」
「違うわよ」
コースで頼んだ料理が次々とテーブルの上に並べられていくなか、徐々に打ち解けていく2人に、東雲は、しおりを構いながらも会話に入っていく場慣れ感に、しおりは、ポツンと取り残され、何気なくホールに目を向けた。
そこで、しおりは、辰巳を見つけた。
女性の肩を抱き、出ていくところだった。
(うそ、どういうこと?)
「ちょっと、お手洗い行ってくるね」
携帯を持ち、トイレに駆け込んだしおりは、辰巳にコールする。
呼び出し音しか鳴らず、出る気配はない。
(誰?誰なの?)
何度も掛け直すが、応答してくれない。
肩がガクガクと震え、最悪な展開を想像する。
『大丈夫。信じてるもの』と鏡に映る蒼白の自分に言い聞かせ、頬を叩いた。
今は、香織の為にここにきたのだと言い聞かせて席に戻ったのだ。
顔色の悪いしおりに零士は、すぐに気がついた。もちろん、職業柄一度会った人間は覚えている零士は、カウンターにいた男が、しおりの彼氏だとも気がついていたが、あえて言わなかったのだ。
女連れで来て、肩を抱き、何やら訳ありの関係に見えた。
しおりが自分で気がつけば、何かしらの行動を起こすだろうし、気がつかなければ、それはそれで、やりようがあった。