佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
「そうですけど…東雲さんとしおりさん、お似合いだと思うから…」
きつく言い過ぎたらしく、香織はしょんぼりと落ち込んでいく。
「香織の気持ちは、わかってるわよ。だけど、付き合うとかは今は無理」
「でも、温泉は行ってくれますよね」
「それさ、もう、あなた達カップルなんだから、2人で行けばよくない?」
「だ。ダメです。絶対にダメです。4人でいく約束しましたよ。初めて、しおりさんと一緒に旅行できるの楽しみにしてたんです。お願いします」
「まぁ、予定ないし、…私も楽しみにしてる」
「しおりさん大好き」
両手を合わせて必死になって頼む香織に、結局絆されるしおりだった。
裏で、東雲より加賀経由で、必ず、しおりを旅行に行くことを頷かせる指令を香織は受けていたのだ。
報酬に、なりたてカップルでは、イブにおさえる事のできないラグジュアリーホテルの一室、スイートルームを譲ってもらう条件となっている。
地元で有名な御曹司の加賀でも、この地では名前を名乗ったところで、どうにかできるほど名は知られていない。
そこで、零士がおさえていたという設定だが、要人向けにいつでも泊まれるよう、ホテル側が隠しているスイート。そこを東雲家の名前を使って、とっただけのこと。