佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
一番、楽しかった時期だろう。
時々、職場でアテンダーの辰巳の話が出るが、それほど深く傷ついていないのだ。
別れたら、しばらく立ち直れそうにないと思っていたのだが、意外と平気な自分に驚いている。
多分、あの日、東雲の胸を借りて思いっきり泣いたおかげだろう。
あの日以降、東雲と会うタイミングがない。
わざわざ、隣に行く用事もないのでお礼できないでいる。
ショートケーキを買って、お礼がてら行こうかと思いながらお店を出ると、一台の高そうな車が駐車場に停まっていた。
運転席の窓がおり、東雲が顔をだす。彼とは、胸を借りて泣いたあの日以来である。
「おつかれ、この後予定がないなら、食事に行かないか?」
東雲の前まで駆け寄ったしおり。
「東雲さん、今日はクリスマスイブですよ」
「知ってるよ。だから、しおりを誘いにきたんだけど、迷惑だったか?」
イケメンがしょげる姿は、卑怯でしかない。
「迷惑じゃないけど、私に予定あったらどうするつもりだったの?」
香織からの情報により、予定がないことは、把握しているとは言えない零士は、苦笑する。
「その時は、運転手したかな。あはは」
「もう…人がよすぎ。だから、モテるんだろうな」