佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
もちろん、東雲がモテる理由は、そんなことではないのだが、あえていう必要もない。
しおりの勘違いを否定しないのは、好感が上がるならと勘違いを利用し、黙るのだ。
「東雲さんは、予定ないの?」
「あるわけないだろ。俺がしおりを好きなこと伝わってない?」
ここで、そんな話を持ちだす卑怯な東雲だが、しおりは、甘い言葉に胸がキュンとする。
「伝わってるよ」
恥ずかしげにぼそりと呟くしおりに、零士は、小さなガッツポーズをとる。
「ご飯、行く?」
「行く」
「よし、乗れよ」
中から、助手席のドアを開ける東雲に、ちょっと、心が浮き立つしおりだった。
東雲の運転で、某ホテル内にあるレストランへ案内され、驚くしおり。
どう見ても、周りはカップルばかりで、何ヶ月も前から予約しなければ、無理だろうと思われる。
東雲が、自分でない誰かと来る予定にして、予約していたのではと、なぜか、心がチクリと痛んで表情が曇っていた。
「何、勘違いしてるかな。たまたま、営業先から、どなたかとどうぞって、もらった優待チケットが今日だったの。誰かにやろうと思ってたけど、しおりとの初デートがラーメンだったから、ちょっとかっこいいとこ見せたくて、連れてきました」
照れて白状する東雲に、クスリとしおりは笑う。