佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
「もう、デートじゃないってば。私に予定があったら、チケット無駄になってたよ。前もって言ってよ」
「俺は、デートのつもりだけど。それに、しおりに話してたら、サプライズにならないだろ」
頬杖をついて、斜め視線で向ける甘い視線に、頬を熱くさせる。
実際は、優待チケットでもないし、もらったわけでもない。かといって、しおり以外の誰かと来る為に、予約していたわけでもない。
東雲の名前を出して、席が用意されただけのこと。
零士が、わざわざ自らそんなことをしてもいいと思うのは、しおりだからだ。
恋人達に向けて用意されたコース料理が、あちこちに運ばれていく。
もちろん、東雲としおりのテーブルにも。
どのテーブルの女性達も、おしゃれして食事を楽しんでいるなか、しおりは、職場で着替えてしまう為、通勤着として、恥ずかしくない程度にカジュアルスーツだ。
「今さらだけど、私、この服装で大丈夫?」
「俺もカジュアルだろ。似合っているから気にするな。店の格とか気にしてるなら、今日は、恋人達の為の夜だ、ドレスコードとか格式ばったことは言わないさ」
「私達は、違うけどね」
そういうことで、しおりは、なぜか心にブレーキをかけている。
「今はな」
めげない東雲は、にこりと笑う。