佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
しおりの思っていた通り、特別に用意された高級なノンアルコールシャンパンだった。
本当は、零士の指示により、デザートに合うアルコールありのシャンパンが用意されていたが、食事と一緒に頼んだ飲み物が、運転手の東雲が飲めないのに、自分だけは飲めないと言うしおりがペリエを頼んだ。そこで急遽、変更を余儀なくされたホテル側だが、そこは一流レストランだけあり、対応は鮮やかだった。
その対応に零士は、ホテル側にチップを弾もうと思うのだ。
楽しい時間は、あっという間に過ぎていった。
それぞれのテーブルのカップルが帰りだし、しおり達も帰る為、レストラン出て、ロビーに向かうと、しおり達とは違う、レストラン内にある別の店で食事していたカップルが横切っていく。
足を止めた男は、振り返る。
「しおり…いや、佐藤さん」
「遠藤さん、お疲れ様です。偶然ですね」
「佐藤さんもお疲れ様」
チラリと東雲に視線を向けた辰巳は、やはりかと思うのだ。
敵意を隠そうとしない東雲に、苦笑する。
そして、しおりも辰巳の隣の女性を見てやはりかと思うのだ。
「また、仕事場でいつかご一緒できることを楽しみにしてます。その時は、よろしくお願いします」