佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
「あぁ、こちらこそ。その時は頼りにするよ。じゃあ、また、機会があれば、よろしく頼むよ」
引き攣った笑みを浮かべた辰巳は、連れの女性と先に行ってしまった。
しおりは、笑えているだろうか?
不安になり、東雲を見上げる。
そんなしおりに、東雲は『頑張ったな』となにも言わずに頭を撫でるのだった。
帰りの車の中、沈黙になる2人。
あんなに楽しかった時間を過ごしていたはずが、あの男のせいで、しおりが落ち込んでいる姿は計画を邪魔されたようで、はらわたが煮えくり返る思いで、ハンドルを握る零士だった。
駐車場に着き、車を止めた東雲を確認して、しおりはぽつりぽつりと話しだす。
「あのね、多分気づいていると思うけど、私と彼ね、別れたの」
「あぁ、何となく気づいてた」
「だよね。あんなに目の前で泣いたんだから気づくよね。でもね、おかげで、なんだかスッキリしていたの。さっき会った時、遠い昔に恋したような感じで、彼を見れた。東雲さんのおかげ。側にいてくれてありがとう」
「感謝するほどのことでもない。俺がそうしたかっただけだし、俺以外の男に、この場を譲る気はないからな」
「どうして、そこまで私を思ってくれるの?私、重い女なんだって…そんな女と付き合ってもそのうち嫌になるよ」