佐藤 しおりの幸せ探し〜揺れる恋
「誰だよ。そんなこと言ったの?あいつか⁈クソ…殴ってやればよかった」
「ダメだよ。東雲さんの手を痛める必要ない」
男を庇うのかと思っていたら、零士の手を心配するしおりに、零士は、目を覆う。
感動した顔を見られたくないからだ。だが、すぐにしおりの言葉に、感情が爆発する。
「私なんかの為に、やめてね」
「私なんかなんて言うなよ。重い?重くて結構。俺の方が重いし、腹黒い。俺が好きになったしおりを侮辱するなよ」
ぎゅっとしおりを抱きしめた東雲の声は、腹立たしさから震えていた。
そんな東雲の背を撫でるしおり。
「私を好きになってくれてありがとう。でもね、別れたばかりで次って気持ちにならないの。だから、東雲さんの気持ちには、まだ応えられない。もう少しだけ、答えを待っててくれる?ずるくて、ごめんなさい」
「待つ、待つから。俺以外の男見ないでくれよ。好きなんだ、どうしようもなく好きなんだ」
顔を起こし、しおりの頬を撫でる東雲の手は緊張したように震えていた。
「なぁ、しおりの心を俺に向かせる努力はしていいだろ?恋人になるまで手を出さないから、一緒に出かけたり、食事もして、夜は、どちらかの部屋でダラダラと過ごしたりして、俺と、恋人ごっこからはじめないか?」